農業がもうからないのは……マーケティング不足?ちきりんの“社会派”で行こう!(2/2 ページ)

» 2009年11月23日 08時00分 公開
[ちきりん,Chikirinの日記]
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農協や農水省の役割は?

 ビールでさえ“新鮮さ”をアピールする広告が打たれる時代に、なぜ生鮮食品のおいしさの宣伝、マーケティングアピールがこんなに少ないのでしょう。

 お米だって同じです。米の消費量が減ることに対して、ご飯をもっと食べてもらうためにどんな工夫が行われてきたのでしょう? 備蓄米とか米飯給食とか、“お国のお金”で米を買うことはしても、“もっと消費者に米を買ってもらう”工夫は果たしてどの程度行われてきたのでしょうか?

 飲料やお菓子、洋服や通信サービス、どんな商品も大量の宣伝が行われています。マーケティング上のあの手この手の進化、付加価値をつけようとする工夫。商品性の改良はもちろんですが、「積極的に売ろうとして必死の努力をする」ことなしにモノが売れる時代ではありません。ごく一部の“ブランド米”“ブランド果物”を除いて、何の“売る努力”の見えない農産物が、「価格だけで選ばれる状態」に陥ってしまうのはある意味当然の帰結と言えます。

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 もちろん、すべての農家にそれを期待するのは無理でしょう。それは、職人さんに営業や広告もやれと言っているようなものです。でも、ちきりんは思います。「農協って何のためにあるの?」「農水省の役割は?」と。彼らは“補助金分配機構”である以上の役割も果たすつもりはないのでしょうか?

 家電メーカーがやっているように、日本で手に入るすべての国、地域のネギを研究して、自地域のネギの差別化戦略を検討している農協はあるのでしょうか? ネギの消費量を増やすマーケティングを手がけている農協はあるのでしょうか? 農産物もほかの消費財・消費サービスと同じです。誰かがマーケティングや販売戦略の検討をまじめにやらないと、差別化できないし売れません。

 最近は、目新しい野菜を海外から探してきて日本で栽培できるよう改良し、食べ方や料理法を積極的に紹介しながら新たな市場を作っていこうとしている野菜農家や農業関連商社(もしくは地方公共団体の支援部署)も出てきています。

 ネギについては「カットネギ」が売られ始めるようになってから“めんどくさがりや”の人にもネギが売れるようになったのではないでしょうか。これは“市場拡大”につながっていると思います。

 農家への戸別所得補償とやらの前に、ちきりんとしては、こういった“ビジネスとして当たり前の努力や工夫”が農業分野でももっともっと積極的に行われることを期待したいです。

 そんじゃーね

著者プロフィール:ちきりん

関西出身。バブル最盛期に金融機関で働く。その後、米国の大学院への留学を経て現在は外資系企業に勤務。崩壊前のソビエト連邦などを含め、これまでに約50カ国を旅している。2005年春から“おちゃらけ社会派”と称してブログを開始。

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