コスプレサミットからカワイイ大使まで――外務省のポップカルチャー外交コミックマーケットシンポジウム(1/4 ページ)

» 2010年01月08日 10時00分 公開
[堀内彰宏,Business Media 誠]

 “外交”という言葉を聞いて、首脳会談や国際連合といった華々しい舞台を想像する人も多いだろう。しかし、外務省ではそういったトップレベルでの折衝とは別に、他国民に直接アプローチすることで対日感情を好転させるパブリックディプロマシー(対市民外交)という試みも行っている。そして、その活動を行っていく上で最近力を入れているのが、日本の漫画やアニメといったソフトパワーを活用したアプローチだ。

 12月30日、世界最大規模の同人誌即売会コミックマーケット(コミケ)で行われたシンポジウムで、外務省中東アフリカ局中東第二課長の中川勉氏が漫画やアニメなどを利用したポップカルチャー外交の現状を語った。

外務省中東アフリカ局中東第二課長の中川勉氏

パリのJapan Expoの盛り上がり

中川 今日は漫画やアニメといったポップカルチャーを活用した外交として、外務省がどういったことをやっているのかということを話したいと思います。

 まず、毎年7月にフランスのパリで開かれているJapan Expoというイベントからお話ししましょう。会場の雰囲気は下写真のようなもので、ノールヴィルパント展示会場というところで行われています。ここは、「日本のコンテンツがどのように海外で受けているのか」ということを実際に肌で感じることができる場になっています。

フランスのパリで開かれたJapan Expo(写真は外務省提供)

 Japan Expoは2009年で10回目で、日本国外で開催されている漫画、アニメのイベントとしてはおそらく世界最大だろうと思います。基本的には漫画やアニメ、DVDといった関連グッズの販売が中心となっています。フランスで漫画本は1冊7ユーロくらい、今のレートで1000円くらいです。これが高いか安いかはちょっと難しいところなのですが、売れ筋は日本と変わりません。『NARUTO』と『ONE PIECE』が人気で、初版で5万部、売れて20万部といった感じだそうです。

(写真は外務省提供)

 Japan Expoの最大の特徴は、何と言ってもその規模です。2008年の入場者数(4日間)は14万人で、2009年は16万人を超えました。3日間で56万人というコミケの規模には及びませんが、場所がパリということ、そしてそこに日本の漫画やアニメを求めて16万人のフランス人が集まっているということはすごいことなのではないかと思います。雰囲気はコミケとよく似ていますね。

(写真は外務省提供)

 Japan Expoでは日本の音楽(J-POPやカラオケ)やファッション、食(たこ焼きやラーメン)も紹介されていて、漫画やアニメにとどまらず、集まってくる人たちの関心がどんどん広がっています。日本の総合文化の紹介の場みたいになっているということです。主催者が日本に来たときにバッティングセンターに興味を持って、「ぜひこれを持ってきたい」ということで、今回はバッティングセンターのブースまで作っていました。

J-POP(左)、J-FASHION(右、写真は外務省提供)

たこ焼きも作った(左)、武道の実技演習も(右、写真は外務省提供)

みんなでカラオケ(左)、バッティングセンターのブースまで作った(右、写真は外務省提供)

 1つ強調したいのは、こうした大型イベントというのはJapan Expoだけではないんですね。世界中でこの手の大型イベントは多くあり、入場者数が数万人規模のものではスペイン・バルセロナの「Salon del MANGA」、イタリア・ローマの「ROMICS」、米国の「Anime Expo」「Comic-Con International(コミコン)」「Otakon(オタコン)」などがあります。欧州や米国の主要都市なら、1000〜2000人規模のイベントはだいたいあるのかなと思っています。

各地のマンガ・アニメ関連イベント(画像は外務省提供)

 ここでみなさんに考えてほしいことなのですが、こういった日本の漫画やアニメの大型ファンイベントに集まってくる外国の若い人たちは、いったいどのような日本のイメージを持っているかということです。みなさんが「自分たちがこういう風に見られているんだろうなあ」と思っているイメージとは変わってきている可能性があるのです。

 Japan Expoに集まってきている人たちに「日本と言われて、何を思い浮かべる?」と聞くと、彼らが最初に思い浮かべる光景は富士山でもないでしょうし、浅草の雷門でもないんですね。おそらく、渋谷のスクランブル交差点だったり、秋葉原の万世橋だったりすると思うのです。

 つまり、外国の若い世代の間では、ポップカルチャーを通じて新しい日本のイメージができつつあるということなんだと思います。これを外交においてどう生かしていくか、それがポップカルチャー外交の出発点だと思っています。

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