「蛇の道は蛇」とはよく言ったもので、変カメラがあるところには変カメラが集まってしまうものらしい。前回、FUJI「TW-3」を購入した店のカウンターに、無造作にもう1つツインレンズカメラ、「SELBY 35TL」が置いてあった。というか、正確にはうち捨てられていたといった方が正しいかもしれない。
プラボディの安っぽいカメラだが、レンズが2つ付いている。メーカーはSELBYだが、全然知らない。底には「MADE IN CHINA」と書いてあるが、表記は全部英語なので、欧米か日本向けに作られたものなのだろう。
お店の人もこれが何なのか分からず、最初はステレオカメラだと言っていた。しかしよく見ると、TW-3と同じようにレンズが回るようになっている。またレンズも左右構造が違っているので、明らかにステレオカメラではない。これもテレとワイドの2Way撮影ができる、ツインレンズカメラのようだ。
値段は210円。電池が入っていないので、正確な動作確認はできないが、シャッターは問題なく切れる。まあ話の種というか、イキオイで購入してみた。我ながら酔狂なことである。
さてこのカメラ、帰ってネットで調べてみたが、ほとんど情報らしい情報がない。Flickrに少し現物の写真がある程度である。というわけで、電池を入れていろいろ試してみることにした。
まずツインレンズの構造だが、TW-3がテレ側はミラーで反射させながら、レンズ自体を折り込んでいたのに対して、こちらはそんな高度なことはやっていない。テレはレンズが前に、ワイドはレンズが後ろに取り付けられているだけである。
回転するレンズの一部に突起がある。最初は回転させるための指がかりかと思っていたのだが、指がかりは別に滑り止めの付いたギザギザがある。「何だろう」と思っていたのだが、ファインダーをのぞいてみて分かった。
これはテレで撮影する時に、ファインダーの内側の枠線を指し示す、矢印みたいなものだった。つまり、テレ側は「こっちの内側の線の範囲が写りますよ」ということなのである。何かの冗談みたいだが、ホントなのである。
ファインダーの横には、CdSセンサーがある。AEなのかな、と思っていろいろな明るさに向けてシャッターを切ってみたが、一向に絞りやシャッタースピードが変わる様子もない。おそらくシャッタースピードは1/60秒くらいだと思われる。
では、このCdSは何をしているのかというと、ある程度暗いところで、裏側の「USE FLASH」というLEDライトを点灯させるためだけのものだった。暗い時には、フラッシュ下のスライドスイッチをONにして、フラッシュ撮影に切り換えなければならないのである。
背面にはフィルムのISO感度調節があり、100から400まで切り換えられる。ASAからISO表記に統一されたのが1983年ということだそうなので、少なくとも1983年以降に製造されたカメラのようである。
このISO感度調節、一体何が変わるのかと切り換えながらシャッターを切ってみたが、どうも単にUSE FLASHのLEDを点灯させる感度を決めているだけのようである。つまりISO400を使うと、ISO100の時よりは暗くてもUSE FLASHが点灯しない、とただそれだけである。
このカメラ、絞りも何にもないのだが、逆に明るいところではどうするのだろうか。あのLOMO LC-Aでさえ絞りもシャッタースピードも変わるAEなのに、何ともアバウトなことである。
映像系エンジニア/アナリスト。テレビ番組の編集者としてバラエティ、報道、コマーシャルなどを手がけたのち、CGアーティストとして独立。そのユニークな文章と鋭いツッコミが人気を博し、さまざまな媒体で執筆活動を行っている。最新著作はITmedia +D LifeStyleでのコラムをまとめた「メディア進化社会」(洋泉社 amazonで購入)。
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