わこ そんなにお金が好きならアメリカでトレーダーにでもなったらいいじゃない。『キャピタリズム マネーは踊る』に出てくる投資銀行のエライ人たちなんかケタ違いの大金持ってってるよ。
佐々 あれはもうレベルが違うっていうか、数字だけのゲームっていうか、なあ……。何か価値観が違うよね。どんなに社会に迷惑かけても社長は高級取りじゃなきゃダメ、運転手付きベンツで通勤が当たり前、的な。
わこ ザ・アメリカって感じだよね、映画全体も、アメリカのドメスティックなドキュメンタリーだった。サブプライムローンに端を発する金融危機とその被害者と加害者(?)に突撃取材するムーア……、マイケル・ムーアの映画をドキュメンタリーといっていいのかどうかはちょっと疑問だけども。
佐々 ありゃあ、そうとう偏りのあるムーア視点だからな……。「きっ○のブログ」みたいなもんで。ムーアの立ち位置が、はっきり金持ち憎し、アメリカ民主党寄りって定まってるから、そういうつもりで観ないといけない。実際のところサブプライムローンの被害者と呼ばれる人々にも何%かの責任はあると思うし。
わこ まあ、ムーアに偏りがあるのは前々から分かってたけど、今回よ〜く分かったのは「マイケル・ムーアはアメリカという国を愛してる」ってこと。ムーアはリーマンショック後のアメリカ発金融危機が世界経済に及ぼした影響についてはたいして興味ないんだなって感じたもん。
佐々 世界経済におけるウォール街の影響力、グローバルな金融危機っていう視点なら、N○Kスペシャルのほうが見ごたえあったな、確かに。
わこ そうそう、ムーアの興味は「僕の大好きな国、アメリカがいまこんなに苦しんでるのは何故なんだ?」っていうほうにあるんだもんね。すごい愛国心を感じたよ。
佐々 その辺、先にバブル崩壊を経験してて、アメリカの状況もバブルなんちゃう? と警告してた日本からすると「おいおい!」と突っ込みたくなるところもあるんだよな。
わこ そうねー、銀行が儲けすぎだ! って叩いて、救済をしぶればしぶるほど救済金がふくらんじゃうのに、とかね〜。資本主義的には銀行いじめたら経済が回らなくなるだけで得にならない、ってことが分かっちゃったからね。公的資金の監視体制が甘かったり、救済されてんのにバカ高いボーナス貰ったりする厚顔さには呆れちゃうけどさ。
佐々 実体経済だけだったら、先進国はいまの生活水準保てないだろうし、ある程度のバブルは必要悪って割り切らないとしょうがないんだよな。いまの体制だと。
わこ 不労所得を全否定はしないけど、バイトしないと食っていけないパイロットとか、アメリカどんだけ?
佐々 あれは驚いたね、パイロットなんて憧れの職業なのに、その足元見て年収200万円未満とか、オフの日はマックでバイトしてるとか。国民航空の組合員もびっくり。
わこ ホントだよ、もっと現場にお金回してくれないとそのうち社会全体のクビが絞まるよ。って、もう絞まってるからこその閉塞感なのか?
佐々 話が大局的になり過ぎなんでそろそろ締めるぞ。結局どっちが社会派なんだっけか? やっぱドキュメンタリー『キャピタリズム マネーは踊る』の勝ちか?
わこ んー、どっちもなんだけど、日本のドメスティックな社会問題としては『沈まぬ太陽』のほうかなあ。
佐々 じゃ、あれだ、国籍で選んでくださいってことだな。
わこ どっちもとにかく「マージンとってる奴は地獄に落ちてください」ってことで。
映画好きが高じて、コラムを書いたりもするイラストレーター。『WOWOWマガジン』『問題小説』『てぃんくる』などでイラストコラムを執筆。『Tokai Walker』の金子裕子さんのコラム「セレブ診療所」にコマ漫画を付けている。過去には『DVD&ビデオでーた』でビデオレビューのイラストコラム、『DVDでーた』で記者会見をレポするコラム『現場から櫻井輪子でした』を連載。
著書に『「へのへのもへじ」から始める 世界一カンタン! イラスト練習帳』がある。公式サイト「SakuraiWako'sめカラうりぼう」。
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