じゃあ、100年変わらないこととは何か?
100年変わらないことの多くは“人間の本質”に関わるようなことだ。生まれて、成長して、成熟して、老いて、死んでいく、というサイクルは1000年単位で見てもまったく変わらない。
また、嬉しいとか好きだとか楽しいとか、反対に、羞恥心、嫉妬心、憤りのような気持ちも変わらない。人間の感情のありようが太古の昔から変わってないことは、歴史を見ればよく分かる。
つまり、社会制度ではなく人間の“生物としてのサイクル”や“感情や心”に関わるようなことは100年経っても変わらないから、そういうことに関してはシニアな人が言うことをよく聞いておけば役に立つ。
以前、薬害訴訟の原告で今は参議院議員の川田龍平さんが記者会見で、「中学、高校の頃から『いつまで生きられるか』と考えつつ生きてきた」とおっしゃっていた。
そんなこと、普通の人は中学、高校時代には考えもしない。しかし70歳になれば死を意識しない人はむしろ少数派になる。つまりシニアな人の多くは、“死”というものを意識した時に「人はどのような心持ちになるのか」「人生はどう見えるのか」ということを知っている。
それは、大半の健康な若者にとって考えたこともない未知の世界だ。が、それは将来必ず自分にも訪れる気持ちの変化、人生への姿勢の変化なのだ。若い頃からそのことを意識しておけば、生き方が変わることもあるのではないだろうか。
また、「親が子どもにどんな気持ちを持つものなのか」「大事な人を失ったら、どういう気持ちになるのか」、そういう“人間の感情”も若い時には想像がしにくいが、いずれは誰もが感じることになる感情。「年をとらなければ分からないことがある」というのは事実なのだ。
というわけで、今回の結論。
後輩へのアドバイスは、“人間として”“人との関わりにおいて”どうすべきかという点に絞って与えてください。社会について、仕事についてのあなたのアドバイスは、残念ながら多分役に立たないです。そういうことについては若い人が若い人のやり方でやるのを信じてあげましょう。
人生の先達が勉強や仕事などについて何かもっともらしいことを言ってきても、おそらくそれらはあなたの人生には関係がありません。
でも、人として、人との関わりにおいてこうなのだ、という話があれば、それには謙虚に耳を傾けましょう。ずっと後から、あなたもそのことが分かるでしょう。
なのだが、さらに一歩進めるともう1つ大事なことが見えてくる。それは、「人として、人との関わりにおいて、生きてきて、学んでこなければ、後輩に残せる言葉は1つも得られない」ということだ。いくら“社会的に”さまざまなキャリアを積み、ビジネスで大成功しても、“人”として、体験し、感じ、成長してこなければ、何も誰かに伝えられない。
つまり「仕事ばっかりしてたらアカンのよ」ということだ。子どもや親や友人や同僚と、人として向き合い、ポジティブな感情だけではなくネガティブな経験や感情も含めて、“人として”感じ考えたことが、次の世代の誰かに伝える価値のある何かを生む。
これが分かったのは、実は結構大きいかも。
そんじゃーね。
関西出身。バブル最盛期に金融機関で働く。その後、米国の大学院への留学を経て現在は外資系企業に勤務。崩壊前のソビエト連邦などを含め、これまでに約50カ国を旅している。2005年春から“おちゃらけ社会派”と称してブログを開始。
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