上杉隆×高野孟 小沢一郎はなぜ、代表選に出馬したのか(前編)(3/3 ページ)

» 2010年09月07日 08時00分 公開
[Infoseek 内憂外患編集部]
内憂外患
前のページへ 1|2|3       

鳩山前首相がなぜ「小沢支持」になったか

上杉 鳩山さんが菅直人支持から小沢支持に動いた。一夜にして小沢支持を打ち出した鳩山さん。でも、ぶら下がりの情報で書かれた記事をよく読むと、ああそうか、と思います。「私は2003年の民由合併を作った一人だ。だからともに作った小沢氏側に付くのが大義だ」というわけです。

 2002年鳩山さんが代表だったときに裏で工作したんですよね。その直前に、菅さん、仙石さん、枝野さんに「小沢と組むなんてとんでもない。党がつぶれてしまう」といって、鳩山さんは当時おろされるのです。

 が、菅さんが2003年に代表になったとき、菅さんと小沢さんは手を結んだんですよ。そして、党大会で菅さんは「民由合併ができたのは鳩山さんのおかげだ」というんです。それを聞いて鳩山さんはウルウルしちゃうんですね。

 鳩山さんは民主党を作った、と思っているんですよ。原点に帰ろうといったのに、菅さんは消費税にしても国家戦略局にしても、外交にしても、真逆にいってしまう。鳩山さんや小沢さんからしたら、ブレているのは菅さんだろう、と思っているのでしょう。そこをちゃんと報じるのが政治ジャーナリズムです。なのに報道は伝えていません。本人がなぜブレたと思っていないかを伝えなければいけません。

高野 鳩山さんが懸念しているのは党が分裂ないし、分裂状態になることです。こう着状態になってしまうことを回避をするための筋道として、仲介役を買って出たのでしょう。それで、菅さんに小沢さんの幹事長職を飲ませようとした。これを菅さんは断固として拒否した。

 それで、これはダメだ、ということになった。党内の不毛な対立を回避し、分裂を避けるため、鳩山さんは小沢支持を表明したのでしょう。鳩山グループが一致して小沢支持とはいかない、ということは鳩山さんも認めています。

上杉 菅さんは菅さんで、権力を維持するためには柔軟な人です。今回は仙石さんと枝野さんの言うことを聞かなかった場合、彼らを敵に回すことで菅内閣を崩壊させてしまう恐れがある。菅さんも積極的に、というわけではなく周りに押されて、という形でしょう。菅対小沢、といわれていますが、仙石対小沢の傾向が強い、コントラストがハッキリした戦いです。

 仙石さんの政治力の強さはびっくりしました。胃がんの手術をされてから凄みが増した気がします。もとから凄いのですが、より迫力が増しましたね。自分はポストを取りに行かない、そういう迫力は凄いですね。

高野 マトモな政治を日本に作ろうという鬼気迫るところがあります。

上杉 小沢さんもそんな傾向がありますね。そうするとポストをちらつかせれば来る、という戦いができない。スーパーナンバー2の戦いです。小沢さんは数のほか、鈴木宗男さんのように知恵のある人が後ろにいますからね。40日抗争のような昔の政治権力闘争みたいで取材のしがいはありますね。

 政策も重要ですが、政治力も大事ですね。それを見て、その人を支持していく、という力になります。いずれにしても、日本の政治を四半世紀なかば支配してきた人たちの戦いです。

高野 これでうじうじするよりも、小沢が力をさらけ出して戦ってしまう。これは非常に興味深いですね。

上杉 マスコミ的には黒幕の小沢さんですが、取材してみると、例えば記者クラブの問題も、新進党時代からずっと記者会見をフルオープンにしています。官房機密費も全部明らかにする、といっています。逆にいうと、小沢さんが総理になると記者会見もすべて、55年体制が残る官僚・マスコミの制度に半ば革命が起こるでしょう。

 菅さんは明らかにする、といっているけどまったく動かないです。

高野 ここの所、目が死んでいましたからね。ここ数日やっと起きた、という感じです。

上杉 がっくりきたのは、最初にやらないといけない。なのに後で良いと思っていたのか全然やらず、最後には仙石官房長官にお任せします、としてしまった。

高野 こうしたことは、先手先手で自分で目覚しいことをバン、とやるものです。小泉的かもしれませんがね。世論との関係でいくとそれが一番大事です。

上杉 「官報複合体」、と私は言っているのですが、そうしたコンプレックスに立ち向かったリーダーは長続きするんです。小泉さんも同じです。2002年に記者会見をオープンにしようとして、大騒動になり、結局記者クラブにスポーツ紙を入れ、ぶら下がり会見をやりました。また、1999年に石原慎太郎さんも記者会見をオープンにしました。それが脅しになって「またやるんじゃないか」と恐怖になったことでか、十何年も石原体制が続いています。

 鳩山さんも菅さんも初日に記者会見オープンとか、ぶら下がり中止とか、最初に大きなメディアにガツンとやっておくと後でナメられたりしなかったのかもしれません。権力闘争なんですから、ジャーナリストと権力者なんて最終的には緊張関係なんですから、なあなあでやろうとしてはいけない。小沢さんならできるかも知れませんね。

 →後編に続く

本記事は「Infoseek 内憂外患」において、2010年8月30日に掲載された「上杉隆×高野孟 小沢一郎はなぜ、代表選に出馬したのか(上)」を再掲したものです。Infoseek 内憂外患では、「小沢VS.菅 民主党代表選 公開討論会」や「小沢VS.菅 民主党代表選挙合同立会演説会」の動画も公開しています。


関連キーワード

民主党 | 小沢一郎 | 菅直人


前のページへ 1|2|3       

Copyright© Rakuten, Inc. All Rights Reserved.