第39鉄 夏の青春18きっぷ旅(3)SLだけじゃない! 魅力満載の大井川鐵道杉山淳一の+R Style(3/7 ページ)

» 2010年09月24日 22時30分 公開
[杉山淳一,Business Media 誠]

 新金谷駅は大井川鐵道の拠点となる駅だ。本社の社屋や検車工場、車庫もある。そこに元南海電鉄の21001系電車の姿が見える。南海高野線の山岳地帯を走るために開発された電車で、平坦な区間では時速100km、山岳区間では時速30kmで走行可能。平坦区間と山岳区間のどちらでも力強く走行できるため、ズームカーと呼ばれた電車である。ホーム付近にも留置線が数本あって、SL列車用の旧型客車が並んでいる。これは鉄道好きには嬉しい光景だ。1本前の電車に乗って良かった。

新金谷駅構内の検車区。南海「初代ズームカー」が見える

旧型客車とSLで「昭和の汽車旅」体験

 ホームの端で、金谷駅からやってくるSL列車を出迎えた。大井川鐵道には現役の蒸気機関車が5台あって、うち1台は休止中。今日の機関車はC56形だ。大井川鐵道で唯一の炭水車付き機関車である。炭水車とは、機関車が使う水と石炭を積む車両のこと。駅での補給回数を減らせるため、長距離運転に適している。

 このC56形は車体の一部が緑色に塗られている。実はこの機関車、太平洋戦争時代にタイに運ばれ、物資や兵員の輸送に活躍した。終戦後は現地に置き去りにされて、タイ国鉄が引き続き使っていた。現地での引退が決まったとき、大井川鐵道が引き取りを願い出て、1980年から日本で復活した。2007年からタイ国鉄時代を再現した塗装になっている。これは日本・タイ修好120年を記念したから。この色の運転は2010年8月までで、今後は日本の国鉄時代の塗装に戻されるという。

タイ国鉄使用のC56。この後、日本国鉄仕様になった

 SL列車の最後尾には茶色の電気機関車がつながっている。この機関車はSL列車の応援役。大井川鐵道では、予約が多いと客車の数を増やして対応する。大井川鐵道は勾配が多く、客車の数を増やすと蒸気機関車のパワーの限界を超える。そこで電気機関車が後押し役になる。この古い機関車も鉄道好きには興味深い。今日の機関車は501形。「いぶき」と愛称が付いていた。かつて大阪のセメント工場と貨物駅を結んでいた機関車だ。この機関車の活躍もしっかり見届けておきたい。なぜなら、大井川鐵道は最近、西武鉄道からE31形電気機関車を3両購入したからだ。後押し役にも新旧交代の時期が近づいている。

SL列車を支援する「いぶき501」電気機関車

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