東京駅から1時間ちょっとで国府津駅に到着する。電車の基地があり、湘南新宿ラインの折り返し駅としても知られている駅だ。ひっそりとした駅構内に、15両編成のE231系が3本もたたずんでいる。その間に挟まれて、見慣れぬ白い電車が停まっていた。JR東海の313系電車だ。御殿場線はJR東海の管轄で、この列車は2両編成のワンマン運転である。ロングシートは地元のお客さんで埋まっていたので、またしても運転台の後ろに立つ。発車すると、いくつもある線路のうち中央の高架線を上っていく。この線路は複線のように見えるけれど、左側は国府津車両センターへの入出庫用線路、右側が御殿場線である。私が乗ってきた東海道線のE231系も入庫するため走り出し、2つの列車が仲良く並んで同じ方向に走っている。なんとなく愉快である。
御殿場線は単線で、列車は前述のとおり2両編成。大動脈の東海道本線に比べると閑散としたローカル線だ。しかし、こちらが開業当初の東海道本線であった。明治時代の鉄道技術では“天下の険”の箱根の山を越えられなかったため、足柄、御殿場を迂回するルートとなったという。1934(昭和9)年に熱海側の丹那トンネルが開通して、東海道線は現在のルートになった。支線となった御殿場線は複線化されていたが、太平洋戦争の物資不足で線路をはがされて単線になった。現在も、トンネルや鉄橋に複線時代の名残が見られる。
箱根を迂回したという御殿場線ではあるが、決して平坦な線路ではない。国府津を出ると緩やかな上り坂が続く。線路脇の勾配標を見ると10パーミル前後であった。パーミルは「%」に0をくっつけたような記号を使って表し、日本語だと「千分率」。百分率を%というけれど、こちらは千分率である。
10パーミルの勾配とは、1000m進むと1メートルぶんの高度が変化するという意味だ。10パーミル程度だとなだらかな坂道で、ほとんど平坦に見える。しかし蒸気機関車にとっては「がんばらなくちゃ」と気合いを入れるべき坂道になる。
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