TPPに参加するならば、2つの“地雷”に注意せよ藤田正美の時事日想(2/2 ページ)

» 2010年11月01日 09時21分 公開
[藤田正美,Business Media 誠]
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郵政問題を抱える民主党

 農業だけでも説得するのは難しいのに、もう1つ「郵政」という大問題もある。TPPは貿易だけでなく経済全体のバリアを撤廃の方向に持って行こうとするもの。その中では郵政民営化を180度逆転させようとするいわゆる「見直し法案」はTPPの方向性とは相容れない。もちろんこの交渉を主導する米国からは郵政民営化を推進するように要求が出るはずだ。

 そうなったら連立相手の国民新党との約束を反故にしなければならない。それに民主党そのものも民営化には反対していた。なぜなら労組の問題があったからである。TPPに参加するというのなら、郵政民営化を逆転させる「見直し法案」の再提出が困難になることは火を見るよりも明らかだ。TPP推進派と言われる前原外相や仙石官房長官は、果たしてこの問題まで見据えているのだろうか。国民新党との連立解消などということになったら、政権を維持すること自体危うくなるだろう。

農業と郵政という地雷

 農業では超党派の反対論が巻き起こり、郵政では与党や連立政権内の対立が浮き彫りになる。これだけ政治的に難しい課題を11月半ばまでに解決する気が本当にあるのかどうか、かなり疑問だ。

 それでもTPPへの参加は必要だと思う。1つの大きな理由は、急速に経済力をつけ、外交的な圧力を増しつつある中国に対抗するためだ。TPPでは日本のほか、フィリピンや中国にも打診をしているが、関税の撤廃が大きな眼目である以上、中国がすぐに参加するのは難しいという見方が強い。その意味で、日本が参加するかどうか、中国は気にするはずなのである。

 東シナ海や南シナ海で中国の影が大きくなっていることを考えれば、米国も参加しているTPPに日本やベトナム、フィリピンが加わることで、中国に対する“牽制球”になるだろう。日本にとって尖閣諸島が重要な領土であることは自明のことだが、南シナ海も日本の生命線という意味で極めて重要だ。米国が「航行の自由」を盾に南シナ海での中国の勢力拡張を牽制しているのも同じ理由である。

 そうした状況の中で、日本が外交的にコミットしていこうとすれば、経済関係を強めるしかない。ベトナムで原発を受注したのは、ビジネスとしてプラスであることはもとより、外交的にもコミットを深めるという大きな意味がある。

 TPPに参加するためには、農業と郵政という地雷が埋まっている地雷原を無事に渡りきらねばならない。「消費税とは違う」と言って覚悟のほどを語った菅首相だが、失敗すればそれこそ内閣が吹き飛びかねないエリアに足を踏み入れたことを本当に自覚しているのだろうか。

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