競合とは、文政8年(1825年)以来の歴史を持つ老舗、「株式会社伊勢半」の「ヒロインメイク」シリーズだ。「ベルばら」同様、目元を強調し、金髪巻き毛などの懐かしき昭和の少女漫画のヒロインを彷彿(ほうふつ)とさせるキャラクターが全面に押し出されている。有名キャラクターではないものの、商品のキャッチコピーがキャラクターと同じくらいに目立ち、効果を挙げている。
「もっと天まで届け!マスカラ」は、化粧品口コミサイト「@コスメ」の2009年ベストコスメ大賞マスカラ部門を受賞。ほかにも、「泣き顔美しいアイライナー」「唇よ咲け!リキッドルージュ」「揺るがぬ美肌 マット化粧下地」……などなど。ラインアップはアイメークを中心にメークアップ用品とベースメークまでと幅広い。同社社史を見ると、発売は2005年からというから、ほぼ同時期に展開された競合ではあるが最古参であるようだ。
競合環境が激しい、目元ぱっちり少女漫画キャラクター化粧品。ドラッグストアやコンビニで、手に取らせるインパクトが重要なため、見た目も似てきてしまっている。そこで、バンダイは今回、ターゲットをずらすことを狙ったのだと思われる。
今回の「のだめ」では、あえて「ベルサイユのばら」という作品名や、「峰不二子」というキャラクター名を全面に押し出していない。「のだめカンタービレ」がそれらほどメジャーでなかったり、「のだめ」のキャラクターのインパクトが弱かったりということではないだろう。作品やキャラクターへの思い入れや同一化以上に、「お悩み解消」という消費者に課題解決を訴えたかったのだろう。
確かに作品中で主人公の、のだめこと野田恵が化粧をしてひどい仕上がりになるシーンがある。しかし、そのいわれを知らなくとも、化粧に自信のない層や、まだ慣れていない若年層などはターゲットになりうる。
リリースによると、「クレアボーテのホームページでは、動画でメイク方法をご覧いただけます」(現在は準備中)とあり、至れり尽くせりの構えを見せている。うまくターゲットを顧客化し、ファン化できれば、さらなるラインアップを拡充してクロスセリングを図ることも大いに期待できる、なぜなら、「ベルばら」や競合商品のターゲットは、もともとメークに関心があり、より効果的に(しかも安価に)仕上げたいと願う人々だ。「のだめ」のターゲットは自信がなかったり、慣れていなかったりする人であるため、囲い込みがしやすい。
ただでさえ、女児向け玩具市場は急速な縮小をしており、加えて少子化というファクターも重くのしかかり、国内玩具市場は期待できない。バンダイがもう一段飛躍するためには、キャラクターやコンテンツを活用するというノウハウの集積にレバレッジを効かせ、新たな領域のビジネスを展開することが欠かせないのである。今回のキャラ化粧品が、どれだけ成功するのか、今後にも注目してみたい。
東洋大学経営法学科卒。大手コールセンターに入社。本当の「顧客の生の声」に触れ、マーケティング・コミュニケーションの世界に魅了されてこの道 18年。コンサルティング事務所、大手広告代理店ダイレクトマーケティング関連会社を経て、2005年独立起業。青山学院大学経済学部非常勤講師としてベンチャー・マーケティング論も担当。
共著書「CS経営のための電話活用術」(誠文堂新光社)「思考停止企業」(ダイヤモンド社)。
「日経BizPlus」などのウェブサイト・「販促会議」など雑誌への連載、講演・各メディアへの出演多数。一貫してマーケティングにおける「顧客視点」の重要性を説く。
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