ニホンのゲームが“ガラパゴス”から脱出する方法野島美保の“仮想世界”のビジネスデザイン(2/3 ページ)

» 2010年11月24日 08時00分 公開
[野島美保,Business Media 誠]

ソーシャルゲームの日米差

 日本の独自性は、ソーシャルゲームの作り方からもうかがえる。ソーシャルゲームの特徴は、ゲームをオンラインサービスとして提供し、形のないサービスを無料部分と有料部分に区切り、独自の基準で価格を付ける、特有のマネタイズ方法にある。

 「Zyngaは“無料”カフェ経営ゲームでどのように課金させているのか」で述べたように、米Zyngaのゲームでは、少しでも面白いと思うポイントには必ず「値札」が付いている。まるで、マネタイズという終点から発想しているようにさえ感じられる。

 米国式ソーシャルゲームは、価格を付けることに長けている。どのように演出すればお金を払いたくなるのかを徹底的に分析している。特定ページのアクセスなどユーザー行動を常時モニターし、そのデータ分析をもとにゲーム設計をリアルタイムで変えていく。有料利用までたどり着くルートを残して余分なところは削り、最適なゲームに作りこんでいくのである。米国ゲームの優位性は、こうした科学的方法によって、英語圏の数億人のユーザー行動からフィードバックをかけている点にある(「『走りながらマーケティングする』――データに支えられたソーシャルゲーム運営」)。

 ゲームを作った後のチューニングに力を注ぐ米国式に比べて、日本ではゲーム制作のクリエイティビティがより重視される。良いコンテンツを作ることが先決で、後からマネタイズ方法を考えるケースが多い。

 サービスについても同様に、「まずはお客さまを喜ばせ感動を与え、対価をもらうのはその後」という意識が強い。「感動」とは支払った以上の価値を感じることであるとすると、価格が付かない余分のサービスが発生することになる。価格が付かない余分のサービスは、長期的にみると顧客を引き止める力となるのだが、短期的な収益性では米国式よりも不利になってしまう。

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