こんな経営者が、若い人を使い捨てにしている吉田典史の時事日想(3/4 ページ)

» 2010年12月10日 08時00分 公開
[吉田典史,Business Media 誠]

 そこで、賢明な経営者は傲慢な考えをあらためる。そして、皆の力を借りつつ組織戦に切り替え、上昇していく。だが、それはごく少数しかできない。大多数は、組織を作ることができない。皆の力を1つに結集させて、組織として闘う仕組みを作ることができないのだ。

 例えば、1つのプロジェクトでいえば、経営者はその隅々まで把握しないと気がすまない。一応、リーダーを設けるのだが、「あいつでは信用できない」として権限を与えない。いや、奪ってしまい、また自分が仕切る。創業のころから1人で突っ走ってきたくせが抜けないのだ。

 これが、社内のさまざまな部署で起きる。さすがにこれでは管理職は育たない。だから、管理職の離職率は大企業と比べると高い。それも無理はない。経営者が管理職の仕事をしているのだから、しらけてしまうのだろう。そこに20〜30代も不満を募らせて辞めていく。こういう会社を無批判に記事に掲載する記者や編集者は、このあたりの事情にうとい。

年間売上10億円の壁

 取材を通して観察していると、大半の経営者はこの自己中心的な考えを変えることができない。だからこそ、ベンチャーの企業の大多数は20〜30年後、中小企業で終わっていく。

 神田氏の言うように、経営者たちは成功していくプロセスにおいて失敗をする何かを体得してしまうものなのだ。成功体験が失敗体験を生んでいくとも言える。

 今後、ベンチャー企業や中小企業に行こうと思う人は、志望先の会社の売り上げを見てみるといい。売り上げが10億円の前で何年も止まっている場合、その会社の内情は私が説明したものに近い可能性が高い。すべての会社とは言わないが、売上10億円の前で勢いが止まる会社にこういう症状が見られるケースが多いことは事実である。

 しかし、経営者は自らの非を認めない。そして「役員が悪い」「社員がダメだ」「メインバンクがよくない」と言い逃れをする。実はその心こそ、うまくいかない大きな要因なのである。ところが労組もなく、反主流派の役員もいない中で彼に意見を言える人はいない。

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