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» 2010年12月30日 08時00分 公開

あかほりさとる氏が語る、メディアミックス黎明期 (3/4)

[堀内彰宏,Business Media 誠]

直接メーカーなどに企画を売り込んだ

あかほり 『天空戦記シュラト』『NG騎士ラムネ&40』と2回やってみて、「どこかの出版社が乗ってくれれば、仕切りは全部1人でできるのではないか」と思いました。『天空戦記シュラト』や『NG騎士ラムネ&40』は確かに関わらせてもらったのですが、こっち(お金)の方が全然でねえと(笑)、書いても書いてもみんな持っていかれちゃうぞということだったので、「これはオリジナルでやらせてもらった方がいい」と思ったのです。

 また、小説を出すにしても何にしてもほかの人がうまいので、「大きなお祭りを巻き起こさないと業界で地位を築けないし、売り上げも立たない」という気持ちがあって、今思うとそれが結果的にメディアミックスという形になったのではないかと思います。

 メディアオフィス(メディアワークスの実質的な前身)が行った水野良さんの『ロードス島戦記』のメディアミックス展開も参考にして個人でやろうと思い、メディアワークスと『爆れつハンター』(アニメは1995〜1996年)、角川書店と『MAZE☆爆熱時空』(アニメは1997年)、富士見書房と『セイバーマリオネット』(アニメは1996〜1997年と1998〜1999年)と、みんな角川系列ですが、この3つを仕組んでみることにしました。

『セイバーマリオネットJ』

 僕の先人の広井王子※さんやねぎしひろし※※さんがいろいろやってらっしゃったのを参考にさせてもらったのですが、彼らがやったことで一番すごいと思ったのは、直接メーカーなどに行って、自分で企画について話すんですね。僕はそういうことは確固たる組織がないとできなくて、代理店のプロデューサーのような人が行くものなのかなと思っていたのですが、それを自分1人でやれるんだと分かった時に、個人でのメディアミックス展開ができると思ったのです。

※広井王子……『魔神英雄伝ワタル』シリーズや『サクラ大戦』シリーズを手がけた。
※※ねぎしひろし……あかほり氏とともに『NG騎士ラムネ&40』に関わったほか、『天地無用!』なども手がけた。

 一度に3本の企画をやったのは、「3本に1本くらいは成功するんじゃないか」という思いがあったからです。ただ、当時、同じようなことをやる人がいなかったので注目を浴びることとなり、結果的に相乗効果が発生することになって良かったですね。

 小説や漫画は権利を主張するために作らないといけないのですが、核となるのは企画です。それまでは漫画が一番上にまずあって、その下にさまざまな展開がぶら下がる形だったのですが、僕はこういう作品をやっていきたいという企画書を核にして、アニメや小説、CDドラマや漫画、フィギュアなどを展開するようにして、自分でできるところはやって、できないところは角川書店などと協力してやっていきました。

 これによって、絶え間なく作品が出ることが相乗効果を生み出し、CM効果となりました。集英社の『週刊少年ジャンプ』や講談社の『週刊少年マガジン』のように大きな媒体を持っていないので、「同時に展開することで広告効果が得られないか」と考えて、「せーの」でやってみたのです。

 今思えば、本当に手作り感あふれるメディアミックスでした。しかし、これには利点があって、小説や漫画原作、テレビアニメのシリーズ構成やシナリオ、CDドラマのシナリオなどは僕が書きさえすれば間に合うんですよ。まあ、一度にやるのは地獄でしたけど。それぞれをスケジュールに合わせてやって、常に絶えないように商品を世にあふれさせていくということです。

 もともとは「自分の力だけで小説が売れるか分からない」というところから始まって、「いろいろ出してデカイ企画かなと思わせて売ろう」という非常に個人的な理由からやっていたのが、結果的にメディアミックスになっていたというのが正しいかもしれません。

 みんなメディアミックスが分からないので、「期日はどうするんだ」とか「スケジューリングはどうするんだ」と尋ねられるのは全部僕なんですね。それで、僕も「この日までにやりますから、スケジュールこの辺に打っといてください」という感じで、日時をよく考えずに言っちゃうわけですね。言ってしまったら、それに間に合わすために自分で計算してやらないといけないのですが、今振り返ると「よくそれでできたなあ」と思います。

 今のメディアミックスを見ていると、「大きくなりすぎていて、とても僕の手にはおえないなあ」と思います。当時は黎明期でまだ誰もやっていなかったので、僕がやっていることに「これは面白いね」とか「そういうやり方があったんだ」とか言ってもらえたくらいだったので、できたのかなと。早い者勝ちと言えば、早い者勝ちだったのかなと思います。

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