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» 2011年01月07日 14時30分 UPDATE

背筋がゾゾッとする彫刻。「小谷元彦展:幽体の知覚」展 (2/4)

[上條桂子,エキサイトイズム]
エキサイトイズム

 小谷氏は彫刻という概念の脱構築を意識していると書いたが、この作品もまさにそうだ。動物の毛皮という「死体」を素材に用いドレスを作った。

エキサイトイズム 「Human Lesson (Dress 01)」1996年、狼の毛皮、ほか 所蔵:高橋コレクション

 「木彫で扱う木材はそもそも“木の死体”であり、動物の死体である剥製はそれと同様のこと」と小谷氏は語っている。また、狼少女の話がテーマの根底にあるという。双頭の狼は、お互いが前進するとその体は千切れてしまう。そう考えると、人間の少女を育てた狼の表情は、いずれ訪れる別れを予期し、悲しみの遠吠えをしているように見えてくる。

 かわいらしい鹿の剥製だが、その四肢には拘束具のようなものが着けられている。エレクトロというタイトルからすると、鹿はサイボーグ化されてしまったのか。

エキサイトイズム 「エレクトロ(バンビ)」2003年、鹿の剥製、アルミニウム鋳造、ほか 61×60×29センチ 所蔵:肇子フェリエ氏

 小谷氏の作品では、一貫して「痛覚を表象する」と言われているが、鹿が無表情なだけに「走ったら器具が筋肉にめりこむのだろうか」とか「成長を止めるためにつけられているのか」といったように見る方が感情移入してしまい、痛々しさが倍増する。

 長い時間をかけて一滴一滴伝ってくる水が硬化した鍾乳石のような彫刻。この作品のテーマは「重力」だ。重力の法則に従ってあらわになるもののかたちを表現した。「重力」というのも、小谷氏が持ち続けるテーマの1つである。

エキサイトイズム 「スケルトン」2003年 FRP、ほか c.390×φ55センチ イセ文化基金、東京 撮影:木奥恵三 Photo courtesy: YAMAMOTO GENDAI, Tokyo

 最初の展示室から部屋はどんどん暗くなる。薄暗がりの展示室の中央に8角形の部屋が作られ、部屋の壁はそれぞれスクリーンになっており、8方向から滝の映像が投影されている。

エキサイトイズム

 観客はスクリーンのカーテンをくぐって中に入る。床と天井にミラーが張られており、まさに映像に包まれる感覚になる。上下を見回すと、天井の鏡の効果で途端に平衡感覚を失い、空間の中を飛んでいるような感覚になる。しばらく見ていると、滝のスピードにより時間の感覚も狂わせられる。私は、この部屋にいるのが非常に心地よい瞑想空間のように感じられたが、刺激が強いので注意して欲しい。

エキサイトイズム 「インフェルノ」2008-10年 ビデオ・インスタレーション:8面同期ハイビジョン・ビデオ・プロジェクション、4.1chサラウンド・サウンド 556×φ610センチ、5分37秒(ループ)作家蔵 サウンド:高嶋 啓 制作協力:ステッチ、マックレイ 撮影:木奥恵三 写真提供:森美術館

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