1967年新潟県生まれ。1989年時事通信社入社、経済速報メディアの編集に携わったあと、1995年から日銀金融記者クラブで外為、金利、デリバティブ問題などを担当。その後兜記者クラブで外資系金融機関、株式市況を担当。2005年、『デフォルト(債務不履行)』(角川文庫)で第2回ダイヤモンド経済小説大賞を受賞、作家デビュー。2006年末に同社退社、執筆活動に。著書に『株価操縦』(ダイヤモンド社)、『偽装通貨』(東京書籍)、『偽計 みちのく麺食い記者・宮沢賢一郎』(双葉社)などのほか、漫画原作『フラグマン』(小学館ビッグコミックオリジナル増刊)連載。ブログ:「相場英雄の酩酊日記」、Twitterアカウント:@aibahideo
民放や大手新聞が広告収入を収益の柱にしていることは、多くの読者がご存じだろう。不況が長期化する現状、広告主であるスポンサーの発言権が増大していることも想像に難くないはず。今回の時事日想は、スポンサーのご威光、そして顔色をうかがうメディアの内情に触れてみる。
本題に入る前に、筆者の友人に触れる。友人はベテラン脚本家で、映画やドラマなど多数の作品を手がけた実績を持ち、最近は国民的人気を誇る刑事ドラマの脚本家陣にも加わっている。だが、この超人気ドラマを巡り、友人が頭を抱えているのだ。過日、筆者と友人が会食した際のこと。友人は開口一番こんなことを言い出した。
「なにか目新しいトリックはないか?」
友人のネタ切れをサポートしようと、筆者は手持ちのネタ、あるいはお蔵入りになったトリックを提供した次第だが、筆者の提案はことごとくボツになった。理由は簡単だ。ドラマのキモとなるトリックが、番組スポンサーの商品やサービスとバッティングしてしまったのだ。
例えば、保険会社がスポンサーであれば、保険金殺人はダメ。これが自動車会社ならば、轢(ひ)き逃げは論外。ビール会社ならば、アルコール中毒患者を登場させるのはもってのほか、という具合なのだ。こうした事情を背景に、最近の刑事ドラマでは絞殺や銃器を用いるケースが増えているのだとか。
刑事ドラマは、今も昔も人気のコンテンツだ。多かれ少なかれこの手の話は昔から業界内では存在した。ただ、それは本編を初めて放映する際の話だったのだという。
最近は番組制作費の削減傾向が強まる中、再放送への依存度が高まっている。このため、脚本家によれば「通販会社など再放送のスポンサーになりそうな企業にも配慮した脚本を書かなければならない」という側面も強まっているのだという。
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