渋谷にB級グルメ村! 「ギン酒場」の戦略を読み解くそれゆけ! カナモリさん(1/2 ページ)

» 2011年03月30日 08時00分 公開
[金森努,GLOBIS.JP]

それゆけ! カナモリさんとは?

グロービスで受講生に愛のムチをふるうマーケティング講師、金森努氏が森羅万象を切るコラム。街歩きや膨大な数の雑誌、書籍などから発掘したニュースを、経営理論と豊富な引き出しでひも解き、人情と感性で味付けする。そんな“金森ワールド”をご堪能下さい。

※本記事は、GLOBIS.JPにおいて、2011年3月25日に掲載されたものです。金森氏の最新の記事はGLOBIS.JPで読むことができます。


 たこ焼きチェーン「築地銀だこ」を展開するホットランドが4月下旬、全国各地の料理や地酒を楽しめる「B級グルメ村!ギン酒場」の3号店を渋谷に出店するという。

 1号店は銀座に「立ち飲み酒場」として今年1月にオープンした。ニュースリリースによると、「全国から選りすぐりの“ご当地B級グルメ”と“地酒”が楽しめる立ち飲み酒場で、全国から個性豊かな30種類のB級グルメをお召し上がりできます」という。

 2号店は新橋に「トレーラーハウス」4台を利用し、同じくB級グルメと地酒に特化した店舗を3月22日に開店した。

 そして、4月下旬に渋谷に進出する3号店は、5階建てのビルを「1棟借り」しての展開となる。19坪の狭小立ち飲み店やトレーラーハウスと異なる3号店は、明らかに今までと異なる戦略を採っていると思われるが、その真意はどこにあるのか。

 3月18日付日経MJの記事によると、撤退した居酒屋のあとを“居抜き”で活用したということだ。5フロアの総面積は約180平方メートル。大きなビルではないが、1・2号店とは規模もコンセプトも違う。

 「1階はシークヮーサーやマンゴーなど各地のジュースでウィスキーを割ったハイボールが楽しめる。2階はマッコリにご当地焼酎を入れて楽しめる。3階は地酒や地焼酎が楽しめる店とし、4階は宴会ができるようコース料理なども揃える。5階は厨房だ」(日経MJより)

 戦略意図の1つは、「B級グルメ」という1つのコンセプトでビル1棟をくくって、「館」としての魅力を打ち出すことに間違いないだろう。

 流通業の例でいえば、「館づくり」は駅ビル「ルミネ」の得意技だ。ルミネといえば、2011年秋に有楽町マリオン「西武」跡に新店をオープンさせることで話題になった。若年女性層をターゲットに多くのテナントに1万円以下の商品を数多く取りそろえて集客し、高い商品回転率で稼ぐモデルを確立させ、「主力の新宿ルミネの1平方メートル当り売上高は約237万円で、西武有楽町店の2.7倍も売れている」(2010年11月11日付日本経済新聞)という。

 ホットランドの「ギン酒場3号店」も同様に、「B級グルメ」というコンセプトの魅力で「館」を作り、B級グルメならではのコストパフォーマンスの良いフードメニューで集客し、さらにフロアごとに異なる目玉となるドリンクメニューでリピートをうながすという意図だろう。

 日経MJの記事について、Twitter(ツイッター)で紹介したところ、多くのフォロアーから「行ってみたい」という主旨のレスポンスがあった。「館」の魅力は十分だといえる。さらに同店ならではの客の回転率の良さが収益に貢献するはずだ。

 「ルミネ」の場合と異なり、「ギン酒場」は自社だけで1棟のビルを使用しているため、もう1つメリットがある。「シャワー効果」を狙えることと、「ポートフォリオマネジメント(PPM)」が組めることだ。

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