原発事故はいつ収束するのか?――東京電力・勝俣恒久会長が事故後初の会見(8/9 ページ)

» 2011年03月31日 08時00分 公開
[堀内彰宏,Business Media 誠]

最終的なゴールのイメージは

――(IWJ)「廃炉に向けて歩みを進める」という方針を示されましたが、この具体的な最終形はどうなるのでしょうか。チェルノブイリではコンクリートで固めるという封じ込め方ですが、そうしたことを想定していますか。あるいは何らかの形のゴールによって、放射性物質の飛散という被害は完全に食い止めることができるのか。また、最終的に周囲何十キロにもわたって、人の住めない立ち入り禁止区域になってしまうのでしょうか。また、そのためにどのくらいの期間がかかるのでしょうか。

勝俣 先ほど説明したように、まずは冷却から始めて、いろんな課題がありますが、放射能漏れみたいなものを防げるのか、防げないのか。最終的に遮蔽をどうするのか。そこがある意味のステップであろうと思います。

――(IWJ)遮蔽というのは、チェルノブイリのようにコンクリートで固めてしまうようなことを指すのでしょうか?

勝俣 石棺も遮蔽の1つの方策で、ほかの方法も種々検討しているところです。まだ、これだという方法で確定しているものはありません。

――(IWJ)もし最終的に遮蔽が完全に行われて、放射性物質の流出や飛散が完全に食い止めることができたら、周囲はどのようになるのでしょうか。人は戻ることができるのか、あるいはチェルノブイリのように半径30〜40キロという広さで人がほぼ永久的に入れないような土地になるのでしょうか。

勝俣 そこはまだこれからのことで、地域への影響なども考慮しながら、どうしていくかということを、いろいろ手段を検討している。時期については申し上げる段階にはありません。

――(IWJ)冷却装置の復旧についてですが、電源のつなぎこみ作業が成功したと報じられて、安堵感が漂っていますすが、通電しただけでは冷却システムが動くかどうか分からないはずです。地震や津波などで機械系が故障してしまった場合、どのような手立てを打てるのでしょうか。最悪、補修修理できない場合、外部からポンプを持ってくるのでしょうか。

勝俣 冷却システムについてはご指摘の通り、電源が入ってもパワーセンターやポンプなどが水に浸かっていると、なかなかうまく対応するのが難しいです。1つ1つ点検していかないと、稼働するかどうか難しい。

 

 しかしそのタービン建屋の地下に今、高放射線レベルの排水が入っているということで、この点についてはまず排水をすると(いうことが大切)。その後、クリーンにして、1つ1つ点検していく。一番基本の線は、そういうことで冷却を考えると同時に、ほかの方法で冷却できるかどうかの検討も進めています。

――(IWJ)もし、機械的な故障が回復不能なレベルであった場合の、代替手段は用意していますか。

勝俣 基本的に今、そういったポンプ、大きなポンプというより、むしろそれ以下のものでも、いろんな対応方法があるのではないかということで、ポンプ類は多種多様なものを、特にこういう用途だということはなくても調達しています。

――(IWJ)モニタリングポイントが少なすぎるのではないでしょうか。また、各種検査も数が少なすぎるのではないでしょうか。国民の不安は放射性物質の飛散や、それによる被害に移っています。東電は自分たちの敷地内だけでなく、想定される広範な地域にわたって、自らの責任で放射線量を測定するべきではないのでしょうか。

勝俣 モニタリングポイントはご指摘の通り、これまである意味で少なかったということもあります。今日あたりから30カ所で、当然ながら原子力安全・保安院とも相談しながら、モニタリングを開始しました。

――(IWJ)検証方法やモニタリングポストの数値の信頼性は、どのように担保できるのでしょうか。

勝俣 基本的に国の原子力安全・保安院がしっかり見るということだと思います。

――(東洋経済)今後、損害賠償なども含めて、資金がいくらあっても足りないという中、「民間企業としてできれば生き残っていきたい」とおっしゃられました。その場合、銀行団などから資金を調達する以外の手立てはありますか。つまり、出資を見直すなど、組織のスリム化はありますか。

勝俣 今、どのくらい資金調達できて、どのくらい必要か定かでありません。それは1つには復旧費の問題、原子力損害賠償法がどういうことになるのかといったことによるので、なかなか見通しできない状況です。そうしたことを踏まえつつ、対応を図っていきますが、1つの民間企業として最大限のコストダウン、スリム化などの努力は図っていく所存です。

――(東洋経済)今後、火力発電なども使って、できるだけ発電量を増やすというですが、これが今後原油高の中で電気料金にはね返る可能性はありますか。

勝俣 これもなかなか難しい問題です。例えば、燃料費調整制度みたいなものをどういう風に考えていくんだとか、それじゃあほかのものはどうするんだとか、いろんな問題があるので、この辺も今後のいろんなケースを作って、対応をどうするかということだと思っています。

――(朝日新聞)福島第1原発7、8号機、東通原発について、国がこのまま原子力を認めてくれればとおっしゃっていましたが、どちらもかなり先の計画だと思いますが、それを火力に変えるお考えはありますか。また、柏崎刈羽原発は運転を続けています。東電は夏の計画停電に向けて運転を続けていく方針ですが、私たちは夏の計画停電という人質をとられ、「原発をそのまま運転しますか、それとも計画停電をとりますか」という状態です。この点についての考えを教えてください。

勝俣 柏崎刈羽原発は、大変地元にも心配していただいているので、当社としては対応策として、電源車の拡充、冷却をさらに二重、三重に担保するにはどうすべきかといった対応をはかりながら、地元の方々のご理解を得られればということで説明会を行っています。

 福島第1原発7、8号機をどうするかについては、国もありますが、やはり県や地元の理解が大変重要な要素になってきます。現時点ではとてもとても(厳しい)ということなので、そうしたことを含めて今後どうするか詰めていくことになろうかと思います。今、直ちに火力に切り替える計画はありません。

――(フリーランス畠山氏)チェルノブイリでは、事故処理にリクビダートル(清掃人)と呼ばれる80万人もの人員が従事しました。今回の事態ではどれくらいの人員が見込まれるのでしょうか。

武藤 廃炉をどうやるかも含めて、これから検討する段階です。いろんなやり方がありますが、いろんなステップを経て、最終的にどういう形に持っていくかという方向も含めて、いろんな選択肢があるので、現時点でどのくらいの手間がかかるか申し上げるのはまだ難しいと思います。

――(フリーランス畠山氏)放射性物質だけでなく、PCB(ポリ塩化ビフェニール)など、ほかの有害物質についての調査も行う予定はありますか?

武藤 原発の中のPCBについては、どこにどういう機器があるかは把握しています。その状況については確認していきたいです。

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