エコカー補助金が終了して、一時のエコカー狂想曲は収まったかのようだ。しかし、クルマの燃費戦争は依然として続いている。
エコカー市場を牽引してきたハイブリッドカーは、東日本大震災の影響もあり生産台数が減少しているが、トヨタ、ホンダの両雄は「プリウスα」「フィットシャトルハイブリッド」というワゴンタイプを発売した。プリウスαの燃費はガソリン1リットル当たり26.2キロ(JC08モード)、フィットシャトルハイブリッドは25キロ(JC08モード)だ。
電気自動車(EV)では、三菱自動車の「i-MiEV」が低容量バッテリーを採用した廉価版の投入を正式に発表。トヨタもiQをベースにした近距離移動向けEVを開発中だ。
ガソリン車も負けてはいない。アイドリングストップ機能を実装し、「第3のエコカー」として生き残りをかけている。例えば、マツダがついにSKYACTIV TECHNOLOGYによる新型エンジンをデミオに採用。アイドリングストップ機能とあわせて「リッター30キロ」(10・15モードの場合。JC08モードでは25キロ)を実現した。
カタログ燃費は、実走行燃費とは違うことはご存じのとおり(一般的には、実走行ではカタログ燃費ほど良い数字がでない)。しかし、従来の「10・15モード」に変わって登場した「JC08モード」による燃費測定は、より実走行に近いパターンでの計測を行っている。
例えば、10・15モードではエンジンが温まった状態で測定されていたが、JC08モードでは暖気前の測定が25%程度含まれるようになった。また、平均速度や最高速度、所要時間、走行距離のすべてにおいて、実走行環境に近づけるための変更が行われている。
10・15モード | JC08モード | |
---|---|---|
平均速度 | 時速22.7キロ | 時速24.4キロ |
最高速度 | 時速70キロ | 時速81.6キロ |
所要時間 | 660秒 | 1204秒 |
走行距離 | 4.165キロ | 8.172キロ |
10・15モードに比べると、JC08モードによって表示される数値は約1割ほど下がるといわれている。例えば、「リッター30キロ」というSKYACTIVエンジン搭載のデミオも、JC08モードでは25キロになる。
JC08モードによる表示は、2011年4月以降に形式認定を受けるクルマに義務付けられているほか、それ以前に販売されたクルマも2013年2月末までに対応しなければならない。しばらくの間は、どちらのモードでの表示なのか注意する必要がある。
日本自動車販売協会連合会と全国軽自動車協会連合会、日本自動車輸入組合が毎月出している新車乗用車販売台数ランキングによると、2011年5月は1位が「ワゴンR」(スズキ)、2位が「ムーブ」(ダイハツ)と軽自動車がワンツーを飾った。
軽自動車とは、3400×1480×2000ミリ(全長×全幅×全高)以下、排気量660cc以下のクルマ。コンパクトカーよりひと回り小さいボディサイズながら、高さを多く取ることで室内空間を確保しているのが特徴だ。もともと、税金や保険料などの維持費が安く、車庫証明が不要(地域によっては保管場所届出の提出が必要)なこともあってセカンドカーとしての需要も高い。
最近では、車両重量の軽さも手伝って燃費の良い軽自動車が増えてきている。例えば、テレビCMで「TNP」という不思議なキーワードを広めたダイハツ「ムーブ」は、10・15モードでガソリン1リットル当たり27キロというハイブリッド車に匹敵する燃費を実現した。
この軽自動車界に新たな風を吹き込みそうなクルマが、同じくダイハツの「イース(e:S)」だ。2009年の東京モーターショーでお披露目されたイースは2011年中に発売するとされていたが、今年4月の決算説明会において「大きな変更がない限り、2011年9月に国内市場へ投入」と明言された。
注目は、JC08モードでリッター30キロを実現するという燃費。5代目ムーブにも搭載されている3気筒の第2世代KFエンジンをベースに、アイドリングストップ「eco IDLE(エコアイドル)」を組み合わせ、さらに750キロ程度という軽量な車両重量による高い燃費を実現する。
ダイハツ工業の伊奈功一社長は、日刊工業新聞の取材に対して「イースは低燃費の旗艦車種。庶民の足として提供する」とコメントしている。80万円程度の価格設定とあいまって、「第3のエコカー」を牽引する存在となりそうだ。
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