震災から3カ月、南相馬に住むということ東日本大震災ルポ・被災地を歩く(4/4 ページ)

» 2011年07月02日 10時20分 公開
[渋井哲也,Business Media 誠]
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暑さ、洗濯――窓を開けないわけにはいかない

 一方、日常の生活もきつい。

 「窓を開けない方がいいというけど、暑くなると、(窓を閉め切っていると)死にますよ」

 たしかに、窓を閉め切っているのは暑いと感じる。この日は、窓は開けているものの、網戸と障子を閉めると暑いと感じる気温の高い日だった。また洗濯に関する悩みもある。

 「子どもが3人もいるので、洗濯物を干せないのも辛いですね」

 さらに、側溝の線量が高いと分かったので、美雪さんは子どもをそこに近づけさせないようにしている。しかし、いつそこで子どもが遊ぶか分からない。「水で流し、掃除しておきます。それだけでも違うんでしょうし」

 「緊急時避難準備地域」というグレーゾーンに住むのは、それ相応のリスクを検討しなければならないが、それを親に強いるのは、とても辛いことだ。自分で選択した結果は、子どもに跳ね返ってくる。十分な情報がない中で判断するのは、それだけでもストレスが高い。

 「あとで、渋井君が来た時に判断していればよかった、とならないようにしたいが……まだどうなるか」

 震災から3カ月。こうした悩みを抱えているのは、この家族だけではないだろう。こんな辛い選択をしなければならない現状を耳にしたら、政府はどう感じるのだろうか。

渋井哲也(しぶい・てつや)氏のプロフィール

book 『3.11 絆のメッセージ』

 1969年、栃木県生まれ。フリーライター、ノンフィクション作家。主な取材領域は、生きづらさ、自傷、自殺、援助交際、家出、インターネット・コミュニケーション、少年事件、ネット犯罪など。メール( hampen1017@gmail.com )を通じての相談も受け付けている。

 著書に『自殺を防ぐためのいくつかの手がかり』(河出書房新社)、『実録・闇サイト事件簿』(幻冬舎)、『解決!学校クレーム』(河出書房新社)、『学校裏サイト 進化するネットいじめ』(晋遊舎)、『明日、自殺しませんか?』(幻冬舎)、『若者たちはなぜ自殺するのか?』(長崎出版)など。メールマガジン 「悩み、もがき。それでも...」を刊行中。

 5月、被災地の人々の生の声を集めた『3.11 絆のメッセージ』(被災地復興支援プロジェクト)を出版した。


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