コンプライアンスという概念は、身の回りに変化が起こっては困る既得権者にとって、格好の道具となっているのが実態だ。彼らは、自分の存在価値を低下させるような事態を防ぐために、能力的に付いていけないような変化が起こらないようにするために、「コンプライアンスが重要だ」と言っているのである。
コンプライアンスを「社会適合性」と理解する人が、徐々にではあるが増えてきている。法令順守というレベルではなく、顧客や市場や社会の要望を把握し、それに合わせ、従うことがコンプライアンスだという考え方である。違法ではなくとも、社会からの期待や要望とずれたことをやれば企業のブランドに傷がつくという多くの例を見れば、このような理解の仕方は当然である。
そして、コンプライアンス=社会適合性と考えれば、速度を上げて大きく変わりゆく社会に適合するためには、企業も変わらなければならないのは自然な流れであり、「内部的な変化なしに、コンプライアンスの実現もない」ことは容易に分かることだ。
このような理解は、既得権を持つ管理者たちにとって実に不都合に違いない。彼らは、コンプライアンスを、変化を起こさないための道具として使ってきているからだ。コンプライアンスを大義名分に、法令や社内の規程やルールを守らせることにより、現場でイノベーションが起こらないようにしてきた。コンプライアンス=法令順守でなければ困るのである。コンプライアンス=社会適合性となってしまったら、いよいよ既得権が危うくなる。コンプライアンスを法令順守に限定して理解し、その遂行に熱心な管理職には、若手はもちろん経営者も相当に気を付けるべきである。(川口雅裕)
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