そして相変わらず、まだまだ電子書籍プレイヤー企業間でのデバイスやフォーマットの提携、連携も少なくない。「電子書籍市場は完全に勝敗が見え、79ドルで提供されるKindleによってアマゾンの1人勝ちが決まった」という論調も多い中、楽天は電子書籍ストア「Raboo」で購入したコンテンツをソニーの電子書籍リーダーで取り込むことができるサービスを始めるという。もはやユーザーは何が起こっているのかさっぱり分からない。これでは、冒頭のアンケート結果になるのも無理はない。
それでも新たなメディアとテクノロジーを駆使し、新しい体験を提供する「ニコニコ静画(電子書籍)」(ドワンゴ)のようなサービスもある。
先日発表された「ニコニコ静画(電子書籍)」は、ソーシャルリーディングの新しいプロセスと体験を提案するもので、「ニコニコ動画」と同じように、読んでいる電子書籍の上にコメントを投稿することができる。「範囲指定コメント」や「Twitter連携機能」など、読者同士で書籍への感想を発信し、共有できる、これまでにはなかったサービスだ。さらに角川書店との連携によって、角川の「BOOK☆WALKER」で購入したコンテンツは、「ニコニコ静画(電子書籍)」上で閲覧することもできる。
また、ドワンゴの川上会長は「作品を作るにはクリエイターと同等かそれ以上に、編集者やプロデューサーの役割が大きい」と語っている。これは角川グループホールディングスの角川歴彦会長とドワンゴの川上量生会長による対談の中での言葉だが、まさに、現状の電子書籍業界の核心をついている。
電子書籍の将来という話になると決まって出てくるのは、権利問題とフォーマットの談義だが、読者・ユーザーが欲しいのは、テキスト情報だけではなく、その読書体験がもたらす感動や共感、知的楽しさであり、商品としての新しい形なのだ。(猪口真)
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