インタビュー
» 2011年12月16日 08時00分 公開

社食レシピ本が425万部! タニタ・39歳社長の素顔嶋田淑之の「リーダーは眠らない」(2/5 ページ)

[嶋田淑之,Business Media 誠]

レストラン事業がタニタのメインビジネスに?

 書籍が425万部も売れているということ自体が、すでに、そのレシピの有用性を証明していると言ってよいが、タニタはこのレシピを引っ提げて、この11月に外食チェーン「きちり」との業務提携を発表。2012年1月、東京都千代田区に「丸の内タニタ食堂」をオープンすることになった(「『タニタの社員食堂』を丸の内に出店――きちりとタニタが業務提携」)。

丸の内タニタ食堂完成予想図(出典:タニタ)

 「まずはランチ限定で、メニューも日替わり定食と週替わり定食の2つだけにします。しばらく様子を見てから、朝食とか夕食などの提供も、順次検討していきたいですね」と谷田さんはほほえむ。そして、さらなる計画を打ち明けてくれた。

 「現在、1店舗当たり年間7200万円の売上モデルを構築していて、この1号店の状況を見極めた上で、店舗数の拡大を検討します。

 弊社は向こう7年ほどで、現在の売上120億円を、売上300億円へと拡大する予定ですが、このレストラン事業がそのけん引役になることを期待しています」

 一瞬、私は耳を疑った。それは要するに、タニタブランドの象徴とも言うべき体脂肪計や体組成計など健康計測機器の製造販売ではなく、レストラン事業が今後、同社のメインビジネスになる可能性があるということだろうか?

 「その通りです。弊社の創業以来の歩みを見ても、1つの商品だけでずっとやってこれたことなどありませんからね。体脂肪計や体組成計の事業が成功したからと言って、その成功体験に固執していてはダメだと思っています」と谷田さんの姿勢は明確だ。

体脂肪計の成功体験に甘えてはいけない

 偶発的な要素が重なって社員食堂のレシピ本が出版され、そして、それが思いもかけずに大ヒットし、そのお陰でレストラン事業進出という1〜2年前には到底想像すらつかなかったであろう展開を見せているタニタ。

 しかも、そうした偶発的な環境変化の産物と言って過言ではないレストラン事業を、今後の同社のメインビジネスにすることすら辞さないという谷田さんの経営姿勢。その柔軟性には、本当に驚かされる。しかし、谷田さんのそうした姿勢は、何も今に始まったことではなかったようだ。

 タニタの創業は1923年。谷田賀良倶商店という屋号で、シガレットケースや貴金属宝飾品などの製造販売を手がけた。その後、株式会社として登記し(1944年)、谷田無線電機製作所として軍用通信機部品を生産。敗戦後は真鍮製シガレットケース、トースターなどを製造販売し、家庭用体重計は1959年に製造。

 その後、日本第1号となるターンオーバー式のオーブントースターを完成させたり(1963年)、磁石発電式卓上ライターを製造するなど(1970年)、タニタはその独自の技術力を生かして多種多様な製品の開発・生産に従事していたようだ。

 「そのころは、今と違って世の中にタニタ・ブランドと呼べるものは存在しなかったんです。大企業からの生産委託によるOEM※が中心で、自社の主体的意思で製品を開発・生産・販売することがなかなかできなかったのです。それがようやくできるようになり、タニタ・ブランドが確立したのは、1992年に世界初となる『乗るだけで計測できる体脂肪計』を発売し、さらに1994年にこれまた世界初となる家庭用体脂肪計付ヘルスメーターを発売して以降です」

※OEM……Original Equipment Manufacturerの略。他社ブランドの製品を製造すること。
乗るだけで計測できる体脂肪計(出典:タニタ)

 谷田さん自身は佐賀大学理工学部を卒業後、経営コンサルティング会社勤務などを経て、2001年にタニタに入社する。しかし、当時の社内状況は谷田さんに危機感を抱かせるものだったようだ。

 「私の目から見る限り、体脂肪計の成功体験に甘える雰囲気が社内にみなぎっていましたね」

 「今日の延長上に明日はない」「今日の成功は明日の失敗のタネを宿す」とは、多くの成功企業の経営者たちが口にする言葉だが、谷田さんもまた、体脂肪計の成功にとらわれ、あらゆる思考がそこから抜け出せなくなっている自社の現状を非連続・現状否定型で変革する必要性を痛感したようだ。

 米国法人の取締役などを経て、2008年にタニタ第3代社長に就任した谷田さんはさっそく自社革新に取り組むが、その手法は周囲を驚かせるものだった。

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