エキナカからトイレまで――日本ならではのデジタルサイネージとは中村伊知哉のもういっぺんイってみな!(1/2 ページ)

» 2011年12月31日 08時00分 公開
[中村伊知哉,@IT]

中村伊知哉(なかむら・いちや)氏のプロフィール:

慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科教授。京都大学経済学部卒業。慶應義塾大学博士(政策・メディア)。デジタル教科書教材協議会副会長、 デジタルサイネージコンソーシアム理事長、NPO法人CANVAS副理事長、融合研究所代表理事などを兼務。内閣官房知的財産戦略本部、総務省、文部科学省、経済産業省などの委員を務める。1984年、ロックバンド「少年ナイフ」のディレクターを経て郵政省入省。通信・放送融合政策、インターネット政策などを担当。1988年MITメディアラボ客員教授。2002年スタンフォード日本センター研究所長を経て現職。

著書に『デジタル教科書革命』(ソフトバンククリエイティブ、共著)、『デジタルサイネージ戦略』(アスキー・メディアワークス、共著)、『デジタルサイネージ革命』(朝日新聞出版、共著)など。

中村伊知哉氏のWebサイト:http://www.ichiya.org/jpn/、Twitterアカウント:@ichiyanakamura


※編集部注:本記事は2011年12月19日に@IT「中村伊知哉のもういっぺんイってみな!」で掲載された記事を転載したものです。

 3つの産業が熱い視線を送っている。ディスプレイ業界、通信・ネットワーク業界、広告業界。この3つが1つの交点=デジタルサイネージ(参照リンク)に注目しているわけよ。

 私が理事長を務める「デジタルサイネージコンソーシアム」は、5年後には産業規模が10倍以上になって、1兆円に達すると予測している。日本が強みを発揮する成長シナリオを当て込んでいるのだ。

 薄型ディスプレイの製造力はなんだかんだいってまだ強い。光ファイバーやモバイル通信網などデジタルネットワークは世界最先端。ポップで軽快なコンテンツを制作する力もトップクラス。三拍子でそろっている国は韓国を除き他にない。

 さらに、日本には、海外にない多くの持ち物がある。

 例えばケータイ。ガラパゴスとやゆされるほど高度に発達したモバイル通信がサイネージと合体する。マス向けの大型画面と、個人の手のひらのケータイ端末とを連動させて情報を流す。ケータイの課金機能を生かして購買にもつなげる。

 ローソン「東京メディア」やファミマ「SSE」がケータイにフェリカタッチさせているように、大画面で見せて手のひらに誘導するモデルは定着した。逆に、ケータイからサイネージに情報を発信するモデルが注目される。

 秋葉原のヨドバシカメラ前で、巨大ディスプレイにケータイを手にしたアベックが画面に向かって数字を打ち込むゲームをしている。ケータイからTwitterでサイネージ表示するシステムもある。老若男女がモバイルで発信するリテラシーは日本特有。アップロード型のサイネージは日本から世界に広がる。

 そして、自動販売機。八百万(やおよろず)には届かぬが、国内に560万台が配備される自販機ユビキタス日本。有望なサイネージの舞台だ。

 JR東日本の駅で展開されているサイネージ自販機は、ジュースなどの商品ではなく47型スクリーンがあるだけで、しかも年齢や性別が判別できる。自販機の前に誰もいないときはコンテンツを配信し、人が自販機の前に立って商品を購入しようという場合は、年齢や性別を判定してオススメ商品を表示する。

 24時間、電源オンで、ネットでつながる。自販機の中に液晶画面が埋め込まれたサイネージとなり、商品やキャンペーンの情報が流され、おカネが動く。日本特有の光景だ。

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