大学秋入学は新卒一括採用を変える……か?(2/2 ページ)

» 2012年02月01日 08時00分 公開
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雇用規制は秋入学化でも解消されない

 2つめの理由は、新卒採用の絞り込みは、既得権者である現・大企業/公務員正社員を守るため、経営環境の厳しい企業が余剰人員を抱えられないにも関わらず、事実上の雇用規制があるため新卒を採れないことが大きな原因だからです。このことは当然、秋入学化で解消されるものではありません。

 企業で仕事が事実上ない人でも、特に大企業などでは解雇が現実的にできないため、ポテンシャルのある若い人たちに回せる「枠」が足りません。本来であれば、少子化高齢化で、若い人にチャンスが来るはずなのに、その枠は既存正社員が占有しているため、現在のような大不況下では企業に雇用の余力がありません。

 何より雇用規制は、その保護から漏れた大企業/公務員正社員を異端化・異分子化させます。中高年ともなれば、一度正社員の立場から外れれば、それまでいたような大企業/公務員の正社員として採用されるチャンスが激減してしまいます。そもそも公務員は年齢制限で、中高年には応募資格すら与えられていませんから、完全に身分を守られている環境が壊れることは恐怖でしょう。

 雇用調整をしなければ存続できない企業にも、強引に解雇規制を押し付けることにより、その力は潜伏化し、嫌がらせやイジメを通して自主退職に追いやるような陰湿な行動を呼んでしまいます。

 解雇をルール化することは秋入学と同様、全国民が等しく同じ条件を得ることになり、本来はみんなにメリットがあるはずなのですが、現状で恩恵を被っている大企業/公務員正社員などから見れば、自分たちの既得権を脅かす、正にトンデモ措置となるのです。

 「これから社会に出る若者や非正規被雇用者が、調整弁として使われることで既得権を守る」という構造はやはり違うと思います。「雇用規制をなくすことでクビが増える」というのが大きな反対理由だと思いますが、今の、クビになればそこからはい上がること自体が例外・規格外という環境を変えることで、一部の既得権者以外の人にメリットがあると考えます。

 100%の安全などないことを天災はわれわれに教えてくれました。100%誰もが幸福を得られることもありません。無能でも絶対にクビにならない世の中が幸福な世だとは思いません。無能でものうのうと既得権を維持でき、そのツケを他者に回す世の方が私は不幸度が高いと思います。

 みんなが少しずつ苦労を負担し、既得権を持たない、これからの国を背負う若者が、少しでも活躍できる可能性を創るには、解雇規制を止めることが欠かせないでしょう。解雇規制は法律ではなく単なる判例ですから、本気で国が取り組めば改善は可能です。問題は批判を受けてまでそれを断行できる豪腕政治家がいるかどうかです。口先だけ勇ましく、すべて尻すぼみで実行力のない政治家はいりません。(増沢隆太)

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