アップルは社内の秘密保持を強化するために、驚くほど入念なシステムを作った。その中心にある考え方は「開示」だ。会議であるトピックについて話すためには、部屋のなかにいる全員にそのトピックが「開示」されていることを確認しなければならない。参加者全員が一定の秘密を共有しているということだ。
「全員に開示されているとわかるまで、どんな秘密についても話すことができない」。元社員はそう語った。結果として、アップル社員と彼らのプロジェクトは、パズルのピースになる。パズルの完成図は組織のトップレベルにいる人間にしかわからない。レジスタンス組織が敵陣内にもぐりこませる下部集団のようなもので、メンバーは仲間を巻きぞえにしうる情報を与えられない。かつてアップルのハードウェア部門の責任者だったジョン・ルビンシュタインは、2000年、あまり感心できないが効果的なたとえを用いてビジネスウィーク誌にこう説明した。
「うちにはテロリスト組織のように下部集団がある。すべては“知る必要があれば”ベースだ」
あらゆる秘密社会と同じく、最初から信頼ありきではない。新たに加わった者は、一定期間、少なくとも上司の信頼を得るまで蚊帳の外に置かれる。社員からよく聞くのは、具体的な製品ではなく「コア・テクノロジー」にかかわる仕事をしたとか、数カ月の試用期間中、グループの残りのメンバーのそばに坐ることを許されなかったとかいう話だ。 (翻訳:依田卓巳)
(続く)
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