残念ながら、「そのような人間を育てるには何をしたら良いのか?」という問いに正解はありませんが、1つ言えることは部下や後輩の育成のために今よりもっと時間を使うということです。自らが部下や後輩の成長のために必要なことは何かを考えそれを実行する。そのために時間を使うのです。
その時初めて制度や仕組みが、画家の筆や絵具のように、育成の道具として役立つでしょう。
少し古い記事ですし有名な会社ですのでご存知の方も多いと思いますが、48年間増収増益の実績を持つ伊那食品工業の塚越寛会長は、「社員の幸せを通して社会に貢献すること」を経営理念に社員の幸せを露骨に追求してきたそうです。社員の給与や福利厚生に対する考え方もさることながら、この記事の中で私の目に止まったのは、
塚越会長が「かんてんぱぱガーデン」を作り始めたのは1987年のことだった。「職場を緑あふれる環境にすれば、社員が幸せに感じるのではないか」「緑豊かな公園を作れば、美しい街並みにつながるのではないか」。そう考えたためだ。(日経ビジネスオンライン『社員の幸せを露骨に追求する会社』より)
「職場を緑あふれる環境にすれば、社員が幸せに感じる」というのは、はっきり言って論理的に飛躍していますし、普通は「果たしてそれをすることが会社として必要なことなのか?」と考えこんでしまうようなことではないでしょうか? しかし、塚越会長はそう考えてそれを実行してしまうのです。さらにそれ以外にも……。
こういった社員還元は金額の多寡ではない。オフィス環境が良くなった。駐車場が広くなった。食堂がきれいになった――。どんなささいなことでも、「前より良くなった」「幸せになった」と従業員が感じられれば、それがモチベーション向上につながるのではないか。
……と、こうしたら社員が「幸せになった」と感じられるのではないかということを露骨に実践しているのです。
「どうすれば社員が幸せになったと感じられるか」「どうすれば部下や後輩が成長するか」という問いはどちらも正解がないという点で同じです。塚越会長がそうしたように、どうすれば部下や後輩が成長するかマネジャー自らが必死に考えそれを実行することが本質的に重要なのです。
また、それがマネジャーが自己に矢印を向けることであり、そのような正解のない育成の過程を通じてマネジャー自身もまた成長していくのです。(野崎吉弘)
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