ワークショップを日本中に、デジタルキッズに活躍の場を中村伊知哉のもういっぺんイってみな!(2/2 ページ)

» 2012年05月03日 00時00分 公開
[中村伊知哉,@IT]
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すべての子どもがアニメを作れて作曲できるように

 CANVASは吉本興業「PaPaPARK!(パパパーク)」とも連携し、子ども向けワークショップ「面白かし子大作戦」を展開中だ。毎回プロの芸人たちが、特別講師として登場する。

 「お父さんと一緒に、お母さんに送るムービー作品を作ろう!」の巻にガレッジセール、ペナルティが講師を務めた際には、大好きな「2700」八十島さんも親子連れで参加、僕も客として楽しんだのだが、その次にレイザーラモンHG・RGが講師となった「かんじをかんじてつくる」の巻では、「フォー!」と登場したHGに子どもがドン引きで、後部席の親たちが一斉に写メという、なるほど世代は移るのね、などと、NPOと吉本が組む化学反応も感じた次第。慶應の教室に「フォー!」が響くのも、大学当局にバレないかなと少々スリリングでいい。

 こうして開発されたワークショップは、いよいよ普及期に入った。場を広げたい。CANVASは「キッズクリエイティブ研究所」と称し、東大本郷キャンパス、慶應義塾大学三田・日吉キャンパス、早稲田大学西早稲田などのスペースで活動を展開している。

 さらに、こういう活動がどこでも誰でも実施できるように、アーティストや専門家の方々と協力し、ノウハウや素材をまとめたパッケージを開発中だ。小中学校、幼稚園、保育園、学童保育所、アミューズメント施設など、さまざまな場で活用できるようになってきている。

 1995年にジュニアサミットが東京で開催された。情報社会を切り開くための子どものイベントで、同年のジュネーブで開催された情報通信G7で日本が提案したものだ。その第2回を1998年、MITで開催することとなり、ぼくはG7からこの件にかかわって、結局、役所を飛び出してMITに参加したという経緯がある。

 MITでワークショップや技術の開発を行っていたのだが、それを広げるためには、米国ではなく日本で実施するのがよいと考えて設立したのがCANVASだ。技術は米国にあるのだが、それを使うユーザー、つまり子どもたちの創造力、表現力は日本の方が面白くてムチャクチャだと思ったからだ。「ドワー、ドワー、ドワドワドワー! 完」を見れば分かる。

 日本のワークショップは国際的にみて高水準だ。国内で開催されているデジタル系の活動を凌駕するものは世界にも例が少ない。胸を張る。この分野の産学連携が充実し、点だった活動が面的に広がってきた。これは10年間の成果であったと自負している。

 しかし、10年経って、なお道半ば。欧米には至るところに体験学習型の子ども博物館がある。これらは小学校との連携が強く、多くのプログラムが小学校のカリキュラムに組み込まれている。日本ではまだ一般的ではない。

 学校に広げていくには、情報環境の整備も重要。このため、僕は「デジタル教科書」の活動もあわせて推進している。目標は「すべての子どもがアニメを作れて作曲できるようにすること」だ。いよいよ民間の自主活動、課外活動から、学校教育に進める場面だ。

 設立来10年間、理事長を務めてくださった川原正人元NHK会長が2012年1月に逝去された。新理事長には、設立来、事務局を引っ張ってきた石戸奈々子副理事長が就任した。約60歳の若返りだ。僕は引き続き副理事長として若き理事長を支え、新しいステージを開いていきたい。

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