消費者金融業界は、株式を上場している大企業から、中小企業、零細企業、そして“闇金”と呼ばれるところまで“多重階層”になっています。有名大企業の役割は、借金が初めての客を市場に引き込むことです。華やかで親しみやすいCMで“初めての客”を呼び込み、できる限りの額を貸します。
返済能力を超えて貸しても、何の問題もありません。大企業から借りているだけの客なら、返せなくなった時には“より融資基準の緩い中小の消費者金融”から借りてきて、そのお金で自分のところの借金を返してくれるからです。
そして、次々と同じことが繰り返されます。消費者は“より融資基準が緩く、金利はより高い”会社から借りたお金で、“基準が厳しく、金利は安い”会社から借りているお金を返します。
消費者金融企業からみれば、これはまさに“ババ抜き”です。他社から借りて自社の借金を返してもらえれば、そこで“ババ”は下の企業に渡せます。
最後に借り手は“自己破産させずに取り立てる”役割の金融会社にたどり着きます。“闇金”と呼ばれる会社です。そこで彼らは24時間、会社や家族、近所中を巻き込む無茶な取り立てに責められ、正常な思考能力を失わされます。その上で「これをやれば返せるぜ」と“返す方法”の提案を受けるのです。地獄における悪魔のささやきです。
この壮大な罠を成り立たせているのが、「借りた金は“何としても”返すべき」「カネのことを考えるのは汚いことだ」という道徳です。例えば、日本には自己破産を勧める公的機関がほとんどありません。
この法律が成立する前、大阪府八尾市の老夫婦が借金苦のために踏切に飛び込み自殺しました。2人は死ぬ前に警察に相談にいっていました。恐ろしい形相の人たちが毎日毎晩アパートにやってきて、すさまじい言葉とともにドアを蹴って騒いでいく。おびえ、疲れきった2人は最後の望みをつないで警察に救いを求めたのです。
しかし、その彼らに警官が言ったのは、「そりゃあ、借りた金は返さなアカンやろ」という言葉でした。なぜ、この警官は「返せなくなったら自己破産するべきですよ」「市役所の○○窓口に行って、自己破産の方法について相談してください」「そんな取り立ては違法なので今度来たら警察に電話してください」と言わなかったのでしょう?
法律を守らせるのが仕事であるはずの警察官までが、法律ではなく道徳を語るのがこの国の実態なのです※。
もう1つの道徳観である「カネのことを考えるのは汚いことだ」という感覚も問題です。このために日本ではお金に関する教育がまったくというほど行われません。
もうけることの意味、自分の収入内で暮らすことの意味、にこやかな消費者金融のCMの意味、借金をすることの意味など、何も習いません。自己破産という制度も知らないし、言葉を知ってもどこにいって何をすればいいのか分かりません。
「自己破産が安易にできるようになったら、わざと借りて自己破産に走る人が出てくる」という人もいますが、それは杞憂でしょう。現代社会において“クレジット”(お金を借りる能力、資格)なしに生活するのはとても不便であり、誰も彼もが悪意の自己破産に走ったりするとは思えません。
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