コラム
» 2012年08月31日 08時00分 公開

杉山淳一の時事日想:なぜ大田区は京急電鉄への怒りをおさめたのか (3/3)

[杉山淳一,Business Media 誠]
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享受するメリットを履き違えた大田区

 一般の自動車が渋滞にハマっても、多少は自業自得という部分もある。渋滞を避けるためにクルマ以外の交通手段を使えばいいし、もっと迂回したっていい。しかし私はこの付近で、渋滞にハマる消防車、救急車、警察車両を何度も見かけた。これは見ていて切なかった。

踏切で止まる消防車

 蒲田付近のエリアを管轄する消防署も警察署も、京急蒲田第5踏切のそばにある。こうしたクルマが動けなくなる。素人考えかもしれないが、大田区では踏切渋滞のせいで、ボヤで済むはずの家が全焼したり、凶悪犯を捕り逃したり、本来助かるはずの命が間に合わない、なんてことがあっただろう。

 大田区が京急蒲田付近の立体化ですべきことは、渋滞解消で区民の安全性が高まることを評価し、東京都主管の消防や警察と連携して、防災、防犯体制の整備強化を図ることだった。いや、それもちゃんとやっていると思いたいが、京急電鉄へのイチャモンが前に出てしまった。これは失策である。道路のための立体交差だというのに、なぜ大田区は鉄道に対して怒っていたか。ピント外れも甚だしい。

 しかし、それから約2年半、大田区がやりきれない怒りを鎮めるきっかけを京急電鉄が用意してくれた。今年10月に京急電鉄は再度のダイヤ改正を実施する予定と発表したからだ(参照リンク)。京急蒲田駅を通過する列車は残る。しかし、同じ数だけ京急蒲田停車の空港行き快特を増やし、普通列車も1時間あたり3本増やすという。

 大田区にとっては、通過列車が残るという意味でメンツがつぶれたままだが、蒲田停車列車の空港行き快特もあるし、普通列車も増えるから、大田区のメリットは大きいと考えたようだ。

 そこで7月31日、大田区長はコメントを出した(参照リンク)。その内容は「品川・羽田空港間に京急蒲田駅停車の快特が復活することを歓迎する」「普通列車の増便で大田区の利便性が高まると受け止める」「蒲田通過列車については必要最小限の本数で存続することを受け止める」「引き続き、大田区は京浜急行電鉄と協力して地域発展のための取り組みを進める」というものだ。

 大田区のコメントは「列車を増やしてくれたことだし、京急さんの事情も分かりますよ……」という大人の態度に見える。しかし京急電鉄は当初から独自の考えを貫いただけで、次のダイヤ改正もその方針は変わらないだろう。京急蒲田駅通過列車も減らすとは書いていない。

 そういうことなら、大田区長のコメント発表はこのタイミングで良かったのだろうか。京急電鉄は新ダイヤの詳細をまだ発表していない。内々に打診があったならいいけれど、フタを開けたらびっくり……という結果になるかもしれない。そんな意味でも、京急電鉄の10月のダイヤ改正詳細が楽しみである。

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