コラム
» 2012年10月12日 08時01分 UPDATE

杉山淳一の時事日想:「駅」を失った地域はどうなるのか (3/4)

[杉山淳一,Business Media 誠]

 法華口は無人駅であり、周囲は田園地帯である。列車を利用する学生や勤め人しか来ない。かつて私が訪問したときは、この駅舎は鉄道利用者の屋根付き駐輪場となっていた。そんな小さな駅で始まる取り組みを「遊休建物の活用」や「障害者支援活動」だけで捉えてはいけない。私はこの事例を、地域の中心としての「駅」が復興するか、という意味で注目している。

 珍しいパン、おいしいパンがあると聞けば、そのパンを買いに来る人がいる。店員と客の交流が始まり、小さなコミュニティができる。地域の中心になるのだ。そして少しずつ集まる人が増えると、「あれ、このパン屋って列車も停まるのか」となり、「じゃあ乗ってみるか」となる。本末転倒だけど、それでいいのだと思う。

北条鉄道の紆余曲折

 北条鉄道の活性化の取り組みについては、過去に本誌「近距離交通特集」で詳しく紹介した(関連記事)。ネタばらしをすると、当時の加西市長であった北条鉄道社長は、私の大学の先輩であり、彼の東京の自宅も近所だった。その縁で取材させていただいたという経緯がある。彼は北条鉄道を残すと決め、ボランティア駅長「ステーションマスター」制度を発足。「新日本様式100選」にも選ばれた。

 しかし、この北条鉄道の取り組みは、市長の人気取り、政争の具という穿(うが)った見方もあったようだ。前市長が決めた「子ザル駅長」については、選挙中はやめろと飼い主に嫌がらせの手紙が届き中止に。新市長に変わると、前市長が決めた民間社長を解任するなどゴタゴタが続いた。それを私はハラハラしながら見守っていた。

 その騒ぎも現在は落ち着き、子ザル駅長は復活、ボランティア駅長「ステーションマスター」制度も継続され、4期目がスタートしている。かぶとむし列車、サンタ列車も運行されているようだ。新市長、新社長のもとでも北条鉄道は大事にしてもらってるな、と安心している。先輩にはお世話になったけれど、私にとっては北条鉄道のほうが大事であった。

 そして今回のパン屋さん、喫茶室のオープンである。駅が地域の中心、人々の心の拠り所として復活し、地域自体が活性されるかと期待する。その背景には、隣の播磨下里駅のステーションマスター「駅長住職」が、下里庵という憩いの場の運営してきた実績も評価されたのだろう。

yd_sugiyama3.jpgyd_sugiyama4.jpg 国鉄時代からの歴史を感じさせる駅名標(左)、この駅舎にパン屋さんと喫茶店が入る。地域の中心になると期待したい(右)

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