「駅」という「中心」を失った地域はどうなるのか。9月下旬、長野電鉄は今年3月で廃止された屋代線の線路設備を撤去する意向を示した。「更地にしないと活用しづらい」という地元自治体の要請に応えた形だ。すでに列車は走らず、機能を失っている駅。しかし、これらの駅には「中心」という役割はなかったのだろうか。
列車が走らなくても、バスターミナルや集会所として残された駅の事例は多い。これは「駅が地域の中心である」という証明だろう。屋代線の「駅」は地域にとって失って良い存在だろうか。
三陸には線路ごと「駅」を失った地域がたくさんある。BRT(バス専用道システム)で再建する路線もあるというが、果たして「バスの停留所」に地域の「中心」となる力はあるだろうか。その地域の人々の拠り所がなくなってしまわないか。それが心配である。
鉄道を廃止し、駅を取り壊すなら、代わりの「中心」を用意しなくてはいけない。鉄道を維持する費用は帳簿に現れる。しかし新しい「中心」を作り出す費用の見積りは難しい。
人々の拠り所という価値は、帳簿には現れない。地域の再建を大切にするなら、帳簿を見ている顔を上げて、地域の人々と向き合わなくてはいけない。
北条鉄道は単線。上下とも一時間に1本の運行
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