電子マネーには、カードという実体が主な拠点になるICカード型と、コード番号などの情報を入力して扱うことが多いサーバー型がある。さらには、ショッピングの特典として付与される(非購入型)ポイントもあり、分類は多岐に渡るが、ここではネット上で流通する仮想通貨として大まかにくくりたい。
仮想通貨としてみると、電子マネーサービスはネットバンクと比べて会員の死と向きあう機会は少ないようだ。複数のサービス企業に確認したが、遺族から問い合わせを受けた事例はほとんどなかった。匿名で「遺族の方が存在に気付いても少額の場合が多いでしょうし、相続対象としてわざわざ処理しない場合が多いのではないでしょうか」(ある電子マネー担当者)といったコメントも聞かれた。電子マネーは特定の環境で使える「通貨」としての側面が強く、銀行口座のように相続する「資産」として見られることが少ないのかもしれない。感覚としては故人の小銭入れや財布の中身に近いか。
そのため、企業が所有者の状況を確認することもまれなようだ。電子マネー「NET CASH」を展開しているNTTカードソリューションは、「NET CASHのご購入およびご利用時に個人情報をいただいておりません。一部でメールアドレスをいただくオプションサービスもございますが、お客さまのアクセスの状況を把握できないため、お亡くなりになっているか否かを確認することはいたしません」と語る。電子マネー「楽天Edy」も同様だ。「個人情報を保有してないため、当社がユーザー個人の状況を知るすべがございません」とのことだ。
相続についても規約を設けていない場合が多い。Ameba内の通貨「アメゴールド」についてAmeba広報は「遺族の方が引き継ぐということは、現状想定しておりません。過去にそのようなご依頼もありません」という。さらに非購入ポイントの「楽天スーパーポイント」の場合は、「ご遺族に引き継いでいただくことはできません。利用規約に基づき、会員の死亡が確認された場合には、その時点で権利が失効されます」(楽天)と、購入者のみに与えた権利というスタンスを明確にしている。
遺族に相続されない電子マネーやポイントは、無期限のものならサービスが提供され続ける限りその価値を保ったまま宙に浮いた状態を続けることになる。有限のものなら誰にも知られず、やがて消滅する道をたどるわけだ。
ただし、こちらも例外がある。楽天Edyは「遺族への相続が可能」と明言する。いわく「遺族が残高を相続した場合は、遺族側での適切な法的処理を行った後にそのまま利用できるものと考えられます。ただし、過去に1件も実例がないため、現時点で特に定めた手続きや書類はございません」とのことだ。将来的には、遺産としての電子マネーを遺族で分け合う場合も出てくるかもしれない。
これまでに探った実態をもとに、次回は法の観点から「死とインターネット」の今とこれからを調べてみたい。
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