グローバル化と国際化ってどう違うの?ビジネス英語の歩き方(2/2 ページ)

» 2013年01月11日 08時00分 公開
[河口鴻三,Business Media 誠]
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グローバル企業とは?

 かつては多国籍企業(=multinational company)という言い方が盛んにされたことを覚えている人もいると思います。さまざまな国にビジネスを展開し、それぞれの国の文化に対応しながら拡大を目指す。それが多国籍企業です。例を挙げれば、金融のシティバンク、石油のエクソンモービル、あるいはIBMなども典型的な多国籍企業と言えるでしょう。もう1つ挙げれば、ゼネラル・エレクトリックも代表格の1つです。

 ゼネラル・エレクトリックは、トマス・エジソンが発明した電球を最初の主要商品として1878年にスタートした会社です。創業してから130年以上経って、その製品や事業内容はずいぶん変わってきました。今では、ジェットエンジンとか原子力発電施設などの大型のエンジニアリングから、MRIやCTを使った医療機器まで、非常に幅広い分野でビジネスを展開しています。

 世界中に進出し、それぞれの国、それぞれのマーケットに適応しながら巨大なビジネス複合体になっています。売り上げ、利益とも、常に世界のトップ10に入り、時にあらゆるビジネスのナンバーワンにランクされます。ゼネラル・エレクトリックは、典型的な多国籍企業だと言えるでしょう。

 しかしゼネラル・エレクトリックがグローバル企業かというと、必ずしもそうではありません。なぜならば、グローバル企業は、厳密な言い方をすれば、国やマーケットの違いを超えて、世界中の人間に共通するニーズに対して商品やサービスを提供することで一気にビジネスを展開するという特徴を持っているからです。ゼネラル・エレクトリックは、B2Bのビジネス分野が多く、それぞれが受注によって成立するビジネスが多くを占めています。そういう意味でも、偉大な多国籍企業として、その姿を変えてはおらず、従ってグローバル企業とは、必ずしも言えないのです。

 では、典型的なグローバル企業とはどこなのでしょうか? まず言えるのは、アップル、グーグル、ヤフー、マイクロソフトといったIT系の企業です。彼らは、世界中に同じ商品あるいはサービスを提供し、その質を上げていくことで新しい価値を提供し、市場を創造していきます。半年に1度、あるいは1年に1度といったペースで世界中ほとんど同じ商品を提供したり、リニューアルしたりしながらビジネスを拡大します。

 グローバル指向の企業は、IT系だけではありません。生活用品を扱うP&G(プロクター&ギャンブル)、ヘルスケア製品を扱うジョンソン&ジョンソンといった企業も、多国籍企業からグローバル企業にかじを切っています。かつてはそれぞれの国に適合した商品、マーケティングさらには人事制度を、国ごとに持っていたものですが、最近ではグローバルに横串を指す動きを強めています。

 P&Gは、米国のオハイオ州シンシナティに本拠を置く企業で、男性用の商品ではひげそりのジレット、ブラウン、女性用にはSK-II、パンテーン、ヴィダルサスーン、マックスファクターなど、ほかに洗剤のレノア、ファブリックケアのファブリーズなどたくさんのブランドを持っています。

 驚くのは、こうした化粧品、洗剤などのグループがすべて10億ドル以上の売り上げを持っているという点です。商品群も多彩ですが、それぞれがかなり大きい会社に相当するくらいの事業規模を持っているのです。

 スイスに本拠を置くネスレも同じ傾向を追求しています。ネスカフェを始め、世界中でネスレの商品は見られますが、それぞれがグローバルに、ほぼ共通、あるいはまったく同じ商品として販売されているのです。

 こうした陰で、かつては存在できたローカルな商品が、徐々に姿を消しています。ビジネスが、国際化ではなくグローバル化しているためにこうした非常に大きなうねりが起きているのです。

 「日本は米国や欧州とは別です、違います」と言えば済んだ時代は終わりました。国際化が進んでいた時代には、日本は独特のマーケットとして存在は大きかったのですが、今は世界中の人々、世界中のマーケットが同じ商品を受け入れる時代です。

 かつてマクドナルドは、米国のファストフードを象徴するチェーンとして、やや嘲笑される面もありました。今ではモスクワであろうがタシケントであろうが、マクドナルドはグローバルな存在として受け入れられています。

 そういう傾向を、世界が単一化して、それぞれの国が個性を失いつつあると嘆くこともできます。またそうした嘆きには、正しい面も多々あります。しかし一方、世界のほとんどの国で、安全に配慮した商品が、非常に安価に入手可能になっているのも事実なのです。

 国際化(=internationalization)とグローバル化(=globalization)の違いをはっきりと認識することは、これからのビジネスにとって非常に重要です。そのことをぜひ理解して、日々の仕事にあたっていただきたいと思います。

著者プロフィール:河口鴻三(かわぐち・こうぞう)

1947年、山梨県生まれ。一橋大学社会学部卒業、スタンフォード大学コミュニケーション学部修士課程修了。日本と米国で、出版に従事。カリフォルニアとニューヨークに合計12年滞在。講談社アメリカ副社長として『Having Our Say』など240冊の英文書を刊行。2000年に帰国。現在は、外資系経営コンサルティング会社でマーケティング担当プリンシパル。異文化経営学会、日本エッセイストクラブ会員。

主な著書に『和製英語が役に立つ』(文春新書)、『外資で働くためのキャリアアップ英語術』(日本経済新聞社)がある。


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