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オランダに拠点を置くユーロポール(欧州刑事警察機構)は2月4日、世界中で行われた680に上るサッカーの試合で八百長が行われていたと発表した。そのニュースは瞬時に世界を駆け巡った。
八百長があった試合は、ワールドカップ予選や欧州選手権、欧州チャンピオンズリーグなど、世界中のサッカーファンが寝る時間を割いてでも観戦するような人気の高い試合も含まれていた。ユーロポールによれば、八百長によって800万ユーロの金が動いており、今後100人以上が起訴される見込みだ。
『黒いワールドカップ』(講談社刊)の著者で、欧州チャンピオンズリーグを主催する欧州サッカー連盟(UEFA)で八百長に関するアドバイザーを務めたこともあるカナダ人ジャーナリストのデクラン・ヒルは、サッカー界の八百長をずっと追いかけてきた第一人者だ。
ヒルは、今回のユーロポールによる発表をどう見ているのか。「八百長について事実が明らかになるのはいいニュースだ。ただ八百長はずっと長くサッカー界に覆っていたから、今回の発表に大きな驚きはない」
そう、八百長は今に始まったことではない。イタリアでも毎年のように問題になっている。そもそも八百長を仕込むにはピッチにいる人、または監督などを買収する必要がある。そのために現金を渡したり、接待漬けにしたり、ときには女性をあてがうこともある。
過去のニュースや、前出のヒルによれば、1990年代には、フランスのマルセイユが豪華な贈り物で審判を買収し、スペインのアトレチコ・マドリードも、ショッピングセンターを貸し切って審判団に思う存分買い物をさせたという。また試合を裁くためにマドリードを訪れたとき、ホテルにプレゼントとしてホームシアターセットが置かれていたと証言した審判もいた。
こうした話は無数にある。1993年の欧州チャンピオンズリーグ決勝戦の後に、イタリアのACミランでプレーした選手2人が、試合後にマルセイユのスタッフの所に来て、「報酬」を受けとったという話も有名だ。また欧州の審判たちは、韓国でのフレンドリーマッチ(賭けの対象になる)では審判が夜の接待を受けていたという。
ただ今回のユーロポールの発表には、従来にはなかった特筆すべき点がある。当局が「シンガポール」という国名を名指ししたことだ。ユーロポールはシンガポールを拠点にする八百長組織が、世界中の八百長に関与し、大金を荒稼ぎしていると指摘している。
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