PC遠隔操作事件の“実態解明”は? メディアが忘れた大事なこと相場英雄の時事日想(3/3 ページ)

» 2013年02月14日 08時00分 公開
[相場英雄,Business Media 誠]
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 “戒名”は伏せるが、ある重大事件の容疑者が特定された際も防犯カメラの映像解析が決め手になったことを知らされ、仰天したことがある。

 数年前、閑静な住宅街で殺人事件が発生した。だが、怨恨や物盗りの線が一向に浮かばず、捜査は難航。しかし捜査本部の中で、防犯カメラを専門に追う捜査員たちが根気強く映像分析を継続。この中から、犯行現場に現れたとみられる不審人物を特定。最終的には商店街の個人商店やチェーン店、鉄道の駅やその他交通機関の防犯カメラ画像をつなぎ合わせることで犯人の足取りをほぼ完璧にトレースしたとされる。この事件では、加害者と被害者に接点が全くなく、加害者の突発的な犯行だったことが後に明らかとなった。つまり、防犯カメラの映像分析が行われなければ、「“お宮”(未解決事件)になっていた公算が大」(捜査関係者)という。

 現在、遠隔操作事件で合同捜査本部に逮捕された男性は容疑を否認しているという。だが、私個人の見方としては、防犯カメラの映像解析に長けた捜査員の分析が正しい、とみる。いや、これ以上誤認逮捕をするわけにはいかないので、幾重にもチェックを施したのちに、捜査本部は逮捕状の請求に踏み切ったはずだ。

 逮捕された男性は、インターネット上の足跡をキレイに消し去るスキルに長けていた一方で、実際の行動では防犯カメラに残った“痕跡”を消去することを忘れていたわけだ。ネット捜査の稚拙さで捜査陣を嘲笑ったものの、実地の捜査能力の高さを見誤った決定的なミスだったわけだ。

 少し意地悪な見方をすれば、防犯カメラの映像解析とこれを丹念に再チェックする捜査陣の機動力がなければ、いまだに事件は解決していなかったのだ。

 仮に、同様のネットを経由した遠隔操作事件が再度発生し、かつ犯人が捜査員の動き方を熟知していたらどうか。主要なマスコミは、容疑者の人物像のあぶり出しと並行し、ネット犯罪に対応する捜査態勢が依然として脆弱(ぜいじゃく)であることを詳細に報じる必要があるのではないだろうか。

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