鉄道運賃の緩やかな値上げが始まった杉山淳一の時事日想(1/4 ページ)

» 2013年02月22日 08時01分 公開
[杉山淳一,Business Media 誠]

杉山淳一(すぎやま・じゅんいち)

1967年東京都生まれ。信州大学経済学部卒。1989年アスキー入社、パソコン雑誌・ゲーム雑誌の広告営業を担当。1996年にフリーライターとなる。PCゲーム、PCのカタログ、フリーソフトウェア、鉄道趣味、ファストフード分野で活動中。信州大学大学院工学系研究科博士前期課程修了。2008年より工学院大学情報学部情報デザイン学科非常勤講師。著書として『知れば知るほど面白い鉄道雑学157』『A列車で行こう9 公式ガイドブック』など。公式サイト「OFFICE THREE TREES」ブログ:「すぎやまの日々」「汽車旅のしおり」、Twitterアカウント:@Skywave_JP、誠Styleで「杉山淳一の +R Style」を連載している。


 以前、本コラムで危惧したとおり、ついに「周遊きっぷ」が廃止される(関連記事)。私は小学生の頃から東京ミニ周遊券を使いはじめ、学生時代はワイド周遊券やニューワイド周遊券で乗り歩いた。当時はエリア内の夜行列車も多く、きっぷさえあれば宿代を節約できた。鉄道ファンだけではなく、当時は若者のほとんどが使っていた方法だ。周遊券は現在の青春18きっぷと同じくらい認知されていた。私と同世代かそれ以上の人々にとって周遊券は懐かしく、周遊きっぷの廃止はひとつの時代の終わりと認識されるだろう。

 しかし、振り返ってみると、廃止やむなしという印象もある。私にとって、いまの周遊きっぷには使い道がない。むしろ2012年春に廃止されたエリアのほうが魅力的だった。周遊きっぷを危惧した本コラムの末尾で、私は「山陰ゾーンがなくて困った」と書いた(関連記事)。山陰方面への旅はどうなったかというと、結局、岡山への往復きっぷ(1割引)と青春18きっぷを組み合わせて、ほぼ同等の予算で収まった。北海道に行き、最長鈍行列車2429Dに乗った時は、青春18きっぷとLCCを使った。周遊きっぷより安上がりだった。

 目的地まで往復乗車券が2割引という周遊きっぷは魅力的だったが、いまやLCCやツアーバスなど、安さを志向すれば他にも移動手段はある。現地でフリーきっぷがあればいい。むしろ報道にあるように、2011年度に4万8000枚も売れていたほうが驚きだった。

ついに「周遊きっぷ」が廃止される
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