ドット絵のレトロゲーキャラが活躍――映画『シュガーラッシュ』プロデューサーに聞くアカデミー長編アニメ部門ノミネート(2/3 ページ)

» 2013年02月25日 11時00分 公開
[堀内彰宏,Business Media 誠]

――『フィックス・イット・フェリックス』は架空のゲームですが、映画公開にあたって実際にデモ機も作られました。『ドンキーコング』を作った任天堂などに協力してもらったのでしょうか。

クラーク デモ機はディズニーで作りました。このゲームのアイデアを考えていた時、「ゲームセンターに実際にありそうなアーケードゲーム台を作るべきだ」とみんなが言っていたんですね。

 そこで、米国のあるゲームデベロッパーにゲームプログラムを作ってもらいました。そして、アーケードゲーム台はディズニーのテーマパークを作っているディズニー・イマジニアリングの助けを得て作りました。ゲームプログラムは最先端のものなのですが、アーケードゲーム台は30年前の1982年に作られたかのようにわざと古びさせたものにしました。

 そして7月にサンディエゴで開催されたコミコン・インターナショナルで、このアーケードゲーム台を置いてみました。すると、来場した人たちが実際に遊んでくれて大きな話題になりました。

 そこからちょっと面白い現象が発生しました。ネット上で、「僕は『フィックス・イット・フェリックス』を子どものころに遊んだことがあるよ」「いや、違うよ。『フィックス・イット・フェリックス』は実在しないゲームで君はディズニーにだまされているんだ」といった議論がヒートアップしたのです(笑)。

――『シュガー・ラッシュ』には、『ストリートファイター』のザンギエフや『スーパーマリオブラザーズ』のクッパなど他社の有名キャラクターが登場します。そうしたキャラクターをどうして出すことになったのですか。

クラーク 映画に説得力を持たせたかったんです。私たちで『シュガー・ラッシュ』『ヒーローズ・デューティ』『フィックス・イット・フェリックス』という架空のゲームを作ったのですが、ほかのシーンでは実際に存在するゲームのキャラクターを登場させるべきだろうと考えました。

 ただ、プロデューサーとしては許諾がとれるかという問題について心配していました。そして、ロサンゼルスで開催されたゲームコンベンションのE3で、世界中から集まっていたゲーム会社にプレゼンして、ストーリーボードやアートワークを見ていただきました。すると各社とも非常に興味を持ってくれたのが、予想外でしたね。恐らく、『トイ・ストーリー』や『ロジャー・ラビット』のように違う世界のキャラクターが一堂に集まる作品で成功した前例があったので、興味を示してもらえたのだと思います。

 最終的に、私たちは、各社のみなさんに「パートナーを組んで一緒に映画を作りましょう」とお願いしました。脚本、キャラクターデザイン、モデル、アニメーション、そして最終の映像をすべて問題がないか見ていただいて、キャラクターが忠実に描かれているかチェックをしてもらって、それをちゃんと反映させますと話しました。

 そこでみなさんは初めて、私たちが本当に本気で映画を作ろうとしていて、自分たちのキャラクターも忠実に描こうとしてくれているんだと改めて気付いてくれたみたいで、そこでさらに興味を持ってもらい、各社と強い関係を築くことができました。ナムコ、任天堂、アタリ、セガといったすばらしいゲーム会社と、強いパートナーシップを築けたと思います。

――キャラクター以外のところでアドバイスをもらったところはありますか。例えば、『シュガー・ラッシュ』というレースゲームが、任天堂の『マリオカート』のアドバイスを受けているのではないかと思ったのですが。

クラーク 任天堂から直々にそういうアドバイスをいただいたわけではありません。ただ、リッチ・ムーアも私も『マリオカート』が大好きなので、プレイヤーとしてインスピレーションを受けたことは確かです。『シュガー・ラッシュ』のゲームの仕組みやカメラの動かし方は非常に参考にしています。

 ディズニーの社内にゲーム業界出身のアーティストがたくさんいるんですね。彼らが僕らの社内コンサルタント的な役割を担ってくれて、どうしたらマリオカート風の世界が実現できるか、それをうまく成功させられるかということを考える上で、インプットをもらうことができました。

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