日本人英語のここが外国人に笑われているビジネス英語の歩き方(1/3 ページ)

» 2013年03月12日 08時00分 公開
[河口鴻三,Business Media 誠]

「ビジネス英語の歩き方」とは?

英語番組や英会話スクール、ネットを通じた英会話学習など、現代日本には英語を学ぶ手段が数多く存在しています。しかし、単語や文法などは覚えられても、その背景にある文化的側面については、なかなか理解しにくいもの。この連載では、米国で11年間、英語出版に携わり、NYタイムズベストセラーも何冊か生み出し、現在は外資系コンサルティング会社で日本企業のグローバル化を推進する筆者が、ビジネスシーンに関わる英語のニュアンスについて解説していきます。


 3月4日から国際オリンピック委員会(IOC)の一部が日本に来て、2020年オリンピックに使う予定の施設や、周囲の環境などのアセスメントを行いました。猪瀬直樹都知事がテニスをやったりしたのはご愛敬でしたが、そのニュースの中で、2016年オリンピック招致で東京がリオデジャネイロに負けた理由の1つは、選手村の部屋が狭いというものだったと知りました。

 驚きました。日本人というか、東京都というか、日本オリンピック委員会というか、実に料簡が狭いんですね。きっと終了後は、都営のアパートか何かで使うということで、あまりゆったりとは作らなかったんでしょうね。

 住宅の狭さということでは、実は今、世界的に見ると日本はそんなに狭い方ではありません。ただ、これから100年先を考えたら、防災を兼ね、日本中の住宅で狭いところは広く建て替えて、今の住宅の広さを50パーセント大きくするという法律を作れば、日本の実体経済もまたたく間に良くなると思うのですが。

 さて、そのIOC評価委員来日のニュースでは、安倍晋三首相が英語でしゃべったり、歌を歌ったりと、なかなかの芸達者ぶりを見せていました。

 3年半前、当時首相になったばかりの鳩山由紀夫氏が、国連演説で「Atomic Bombing」を「アトミック・ボンビング」と何度となく言う見苦しい間違いを犯して、しかも得意然としゃべり続けたのにはあきれました。Bombingは「ボンビング」ではなく「ボミング」と読むのは高校生でも知っていますが、米国の大学院に5年もいながら、これでは困ります。世界で失笑を買う材料をばらまいているのと同じです。

 それに比べると安倍氏は神戸製鋼所でのサラリーマン時代、ニューヨークで仕事をしていたこともあるそうで、オバマ大統領との日米首脳会談の後、「彼とはケミストリーが合った」という英語を使って表現していたのに感心しました。ケミストリー(=Chemistry)は普通、化学という日本語に対応しますが、もっと平たい表現として「人間としての性質」「相性」という意味があります。こういう時、「オバマさんとはフィーリングが合った」などと言いがちですが、ケミストリーはぴったりの単語です。

 少し前まで、大手繊維会社の帝人は「Human Chemistry」を会社のスローガンにしていました。「人間のための化学」「人間らしい化学」といったニュアンスを目指していたのでしょうか。

 しかし、英語のネイティブがヒューマン・ケミストリーと聞いたら、「人間の性(さが)」とか「人間関係のあや」といった日本語に相当するメッセージを受け取るはずです。帝人の意図とは逆に、ヒューマン・ケミストリーと言うことによって、「人間というものは大体こんなものですね」という、人間の性、あるいは人間なんだから仕方ないですよね、というメッセージと受け取られかねないということです。帝人は今、このフレーズに加えて、「Human Solutions」という言葉を使っています。「全体として人間の顔をした化学」を標榜する会社でありたいというニュアンスを強くしたのだと思います。

出典:帝人
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