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» 2013年03月12日 08時00分 公開

日本人英語のここが外国人に笑われているビジネス英語の歩き方(3/3 ページ)

[河口鴻三,Business Media 誠]
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 世界では日本人や中国人だけでなく、最近さまざまな分野で台頭著しい韓国人も、その英語が揚げ足取りの対象になっています。

 日本語と中国語のように構造としてはかなり違っている言語を使っている人たちが、同じような間違いを犯しやすい背景には、「主語を明示しない」「冠詞に相当するものがない」といった、従来言われてきた英語との違いを挙げるケースがよく見受けられます。Wikipediaでもこの現象が項目になっており、なかなか面白い分析があります。

 一番根本のところは、連載2回目で取り上げたハイコンテクストにあると、私はにらんでいます。というのも、歴史的には日本語にも中国語にもなくて、英語にあるものは、主語でも冠詞でもなく、ピリオドやコンマ(=句読点)だからです。

 今でこそ日本語では句読点を付けるのが当たり前ですが、実はこれは明治のかなり後期になってからの習慣で、文部省が1906年(日露戦争も過ぎた明治の末期)に、「句読点法案」というものを出してからだというのですから驚きです。

 そもそも漢文(日本で明治のころまで知識人が正式文書などに使っていた和製中国語)には、句読点というものがありません。もちろん本家の中国語にもありません。つまり書く側と読む側が、あうんの呼吸で意味を共有するのが、この時代までの常識だったわけです。

 当然、書き手と読み手が、情報や価値観を共有する度合いが高くなければ成立しない考え方です。情報や価値観を共有するといえば聞こえはいいですが、実際は違います。上から強制的に与えられる情報を確認するための質問には心理的に大きなプレッシャーがかかり、黙って推論し、それに従って行動するしか選択肢がない。少し極端に言えば、そういう文化の社会だから、句読点も明確なもの言いも許されなかったのです。

 この文化(ハイコンテクスト文化)をいまだに引きずっているのが日本であり中国です。いわば書き手に甘えがあり過ぎるのです。相手はこれで分かるだろうという、勝手な思い込みが強すぎるのです。

 グローバル時代の今日、それではコミュニケーションは危うくなります。中国も韓国も日本も、言語に関しては、あるいはコミュニケーションに関してはまったくの後進国です。英語が肩で風を切り、日本語の影が薄くなっている背景には、こういう事情があるのではないでしょうか。

 思い込みではなく、相手がその言葉あるいは行動、慣習で何を伝えようとしているのか、さまざまなコンテクストで検証する必要があります。

敗戦を招いたキスについての誤解

 最後に少し古いですが、「キスの意味を取り違えたのが太平洋戦争の敗因だ」という説を紹介しておきましょう。真珠湾で戦争を始める前、日本は米国と開戦すべきかどうか、非常に悩んでいました。しかし、戦力や生産力の比較の議論と並んで、次のような主張が通るようになり、開戦に至ったというのです。

 「米国人というものは、最後は軟弱である。なぜなら、彼らは人前で平気でキスをする。そんな軟弱な民族に、わが皇国が破れるはずがない」

 キスというものの社交的意味(今風にいえばSocial meaning)をまったく勘違いし、自分たちがキスは隠れてする性的なものだと思いこんでいたために、“軟弱な”米国人に占領されることになるとは。相手の行動や言語には、どういう意味が込められているのかをよく冷静に、沈着に理解した上でなければ、このグローバル化の時代、とても生き残れないのではないでしょうか。

著者プロフィール:河口鴻三(かわぐち・こうぞう)

1947年、山梨県生まれ。一橋大学社会学部卒業、スタンフォード大学コミュニケーション学部修士課程修了。日本と米国で、出版に従事。カリフォルニアとニューヨークに合計12年滞在。講談社アメリカ副社長として『Having Our Say』など240冊の英文書を刊行。2000年に帰国。現在は、外資系経営コンサルティング会社でマーケティング担当プリンシパル。異文化経営学会、日本エッセイストクラブ会員。

主な著書に『和製英語が役に立つ』(文春新書)、『外資で働くためのキャリアアップ英語術』(日本経済新聞社)がある。


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