チャベス大統領と米国の「がん兵器」伊吹太歩の世界の歩き方(3/3 ページ)

» 2013年03月14日 08時00分 公開
[伊吹太歩,Business Media 誠]
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米国が「がん兵器」を使ったのか?

 ちなみにチャベスのがんをめぐっては、興味深い話がある。がんを患ったチャベスは、中南米の指導者が何人もがんになっていることを挙げ、米国が「がん兵器」を使っていると主張していたのだ。

 南米諸国の指導者にがんを患う人が多いのは事実だ。コロンビアのフアン・マニュエル・サントス大統領は前立腺がんで2012年10月3日に手術を受けた。ブラジルのルラ・ダシルバ前大統領も同年喉頭がんの手術を受けているし、その後継者であるジルマ・ルセフ現大統領も2009年にリンパ系のがんを患った。2012年6月に失職したパラグアイのフェルナンド・ルゴ前大統領は悪性リンパ腫(がん)。アルゼンチンのクリスティナ・フェルナンデス大統領も甲状腺がんであることを2011年に公表した。

 さらにチャベスは敬愛しているキューバのフィデル・カストロ議長から、「食べるものなどには気をつけろ。やつら(米国)はいろいろ開発をしているからな」と警告されたと語っていた。そして同じく反米左派政権を率いるボリビアのエボ・モラレス大統領、エクアドルのラファエル・コレア大統領にも、チャベスはこんな風に警告している。「エボよ、くれぐれも体に気をつけてくれ」「コレア、注意したほうがいい」。またチャベスは常々「飛行機で米国に行くのが怖い」とも漏らしていた。

 チャベスにしてみれば、この主張は冗談でも何でもなく、いたって大まじめだった。「確率の問題で考えても、(南米の指導者が次々にがんになる)この状況を説明するのは難しい。ラテン諸国の大統領たちに何が起きているのか。あまりにもおかしいではないか」と指摘した。「(米国が)ガン細胞を拡散する技術を開発しており、その事実が今後50年経ってから明らかになっても不思議ではない」

 もちろん根拠なき単なる陰謀論に過ぎないのかもしれないが、確かに不思議な状況ではある。もしかして50年後に、チャベスという指導者が「がん兵器」に言及していたとしてあらためて注目される日が来る可能性はゼロではない。そして、その時にも、彼のエンバーミングされた亡骸は、生前の姿のまま、一般に公開されていることだろう。

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