番組を動画サイトにアップ、どう思う? テレビが面白い理由田原総一朗VS. 水道橋博士のテレビと著作権(後編)(2/7 ページ)

» 2013年06月19日 12時37分 公開
[COLABORAジャーナル]

テレビ番組は多くの国民に知らせるためにやっている

――テレビ番組を動画サイトにアップロードして、番組の内容を引用しながら個人のブログやソーシャルメディアで話題にするといったことに関してはどうお考えですか?

田原:僕はどんどんやっていいと思う。だってもともとね、テレビ局が番組をオンエアするということは、多くの国民に知らせるためにやっているんですから。それはNHKだろうが民放だろうが変わらない。その番組が放送後にインターネットでも広まっていろいろな人が見ることができる。それはいいことじゃないですか。

水道橋:同じ批評にしたって、推測やその人が見た印象だけで何か書かれるよりは、批評対象の番組を正しく引用されたうえで批評されたほうが、正確でよい批評になると思います。

田原:ただ、引用ならいいけど歪曲はいけませんね。部分部分を切り取ってその人を不利な立場にするために一部を強調するとか。テレビのワイドショーがよくやる手法なんだけど。国会での討論なんかで、例えばこの前の総選挙の前、当時首相だった野田さんが行き詰まったところだけをバーンと大々的に放送したりした。それ以前にどういう議論が交わされて、どういうやり取りがあったうえでそうなった、という過程はどうでもよくて、ただそこだけを流す。ネットでもそういうことが起きなければいいけどね。

水道橋:国会中継って以前ならテレビでしか見られなかったけど、今はUstreamやニコニコ動画で流れていて、最初から最後まで見ることが可能ですよね。全てが見られる環境があったほうがいいに決まっているし、選択肢も多いほうがいい。ただテレビが国会討論を全て中継するっていうのは無理な話だから、そこを編集するのは当然。その編集が歪曲だったら抗議をすればいい。結局、抗議を恐れて普通の引用もしなくなるし、検証もしなくなる、そういう風に自粛することのほうが問題だと思いますね。引用のルールが明確にされてないのはよくないですね。

田原:さっき水道橋さんがおっしゃっていたように、もともとテレビで発言するというのは全世界でどこでも見られる可能性があるわけだ。だから当然その覚悟を承知のうえでテレビに出ないといけないんだけど、実はテレビのコメンテーターにはそういう覚悟がないまま出ている人もいる。非常に多いね。どうせ俺の言うことなんか政治家は聞いてないだろう、と。

水道橋:基本的に映像メディアって今簡単に作れるじゃないですか。番組を引用しながら、勝手に「今こういう問題が起きてます」と指摘する。そういうことができるチャンネルを勝手に立ち上げればいいんだ、と。それで問題提起すればいいんですから。

水道橋:ただ全てが自由に見られればいいわけではなくて。例えば自分がやっている舞台や漫才では、あえて放送禁止用語やタブーを使ったネタをやっています。密室でやるからこそ面白いものだし、演者と観客に共犯関係があるからこそできることなんですね。だからそういったものが勝手に録音や録画をされてインターネットにアップロードされてしまったり、ライブストリーミングで生中継されてしまったりすると大問題が起こるんです。

 でもテレビの場合は、まず出演するという段階から公序良俗のルールを守るという前提でやっているわけだから、インターネットで流れても問題ない。基本的にテレビでの発言は閉じたところで、例えばスナックで自分の意見を言っているのとはわけが違うじゃないですか。放映時間に関係なく、世界中のいろんな場所でテレビ番組が見られる、という環境にすべきだと思ってます。

田原総一朗さん

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