10年後に150万円所得増は実現できる!?――成長戦略に見る政府の方針世の中の動きの個人資産への影響を考えてみる(1/3 ページ)

» 2013年06月26日 08時00分 公開
[川瀬太志,Business Media 誠]
誠ブログ

 今回は政府の成長戦略について考えます。大きな方針はようやく見えたのでしょうか? 先日、安倍内閣の成長戦略の見通しで「10年間で150万円所得を増やす!」という内容が発表されました。

10年で所得150万円増、国家戦略特区新設

 日本経済再生に向けて、政府は14日成長戦略を閣議決定した。対象地域を絞って規制緩和する「国家戦略特区」の創設や大衆薬のインターネット販売の原則解禁などを通じ、10年後に1人当たり国民総所得(GNI)を現在の水準から150万円以上増やす目標を掲げた。

(2013年6月15日付 産経新聞)

「150万円所得増」って本当に達成できるの?

 この閣議決定を受けたマスメディアの論調は軒並み否定的でした。

 目標達成は容易でなく、成長戦略でどうGNIを引き上げていくのか、具体的な道筋を示すことが求められる。

(日本経済新聞)

 150万円増のハードルは高い。平成24年度の1人当たりのGNIは384万5千円。これを10年後に150万円以上増やすには、年率3%超のペースの拡大が必要。

(読売新聞)

 有識者は「企業の生産性が飛躍的に向上したり、輸出環境の大幅な改善など劇的な変化がなければ達成は難しい」と分析。

(産経新聞)

などなど。

 おおむね「そんな水準の成長は無理」、そして「具体策がない!」という評価でした。確かにそうですね。閣議決定された経済財政運営と改革の基本方針を読みましたが、具体的な施策に関するところはぼんやりしていて、成長実現の道筋はよく分かりませんでした。

 でも、この発表を聞いて「達成できるかどうか」ではなく「方針が見えるかどうか」という点で、わたしは妙に納得してしまいました。

 今まで政府は「GDP名目成長率3%、実質成長率2%を目指す」と言ってきました。これを今回は「1人当たりのGNI(Gross National Income:国民総所得)を10年で150万円増やす!」と言い換えました。これは単なる言い換えのようで実はそうではありません。

 これで政府の方針はかなり分かりやすくなったと思います。そしておそらく「GDP(Gross Domestic Product:国内総生産)名目3%実質2%成長」よりは「1人あたりのGNIを150万円増やす」の方が達成しやすそうです。

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