グロービスで受講生に愛のムチをふるうマーケティング講師、金森努氏が森羅万象を切るコラム。街歩きや膨大な数の雑誌、書籍などから発掘したニュースを、経営理論と豊富な引き出しでひも解き、人情と感性で味付けする。そんな“金森ワールド”をご堪能下さい。
※本記事は、GLOBIS.JPにおいて、2013年6月25日に掲載されたものです。金森氏の最新の記事はGLOBIS.JPで読むことができます。
「正直なところ、少し悩んだりはしましたね」。2012年の秋を振り返り、コカ・コーラ ゼロのブランド戦略担当者は苦笑いを見せた。悩みの元は「特保(特定保健用食品)コーラ」。2012年4月にキリンビバレッジが投入、瞬く間にヒット商品となった「メッツコーラ」、そしてサントリーフーズが11月に「ペプシスペシャル」を出して後を追い、(「コカ・コーラ ゼロ」や「ペプシネックス」など、カロリーゼロの“第2のコーラ”に次ぐ)“第3のコーラ”という異名もとった新カテゴリーである。
業界ではこの後、国内コーラ市場でトップシェアを握るコカ・コーラの動きに注目が集まっていた。メッツコーラやペプシスペシャルが特保コーラに採用した「難消化性デキストリン」は、食後の中性脂肪の上昇を抑える効果が期待される成分だが、技術的な取り扱いはさほど難しくないと言われる。先行のペプシがしたように、日本側製造会社と米本社とのやりとりの中でブランドを棄損せぬ味を担保できれば、日本市場のオリジナル製品としての開発、展開は不可能ではなかったはずだ。
サントリーは「ペプシスペシャル」の売上規模を「3年で1000万ケースにまで育てる」と狙い定めている。1億5000万ケースとも推計される国内コーラ市場の規模、あるいは4700万ケースともいわれるゼロカロリー系コーラの市場規模からみても、決して小さい数字ではない。しかしコカ・コーラは、「特保市場は自分たちの戦場ではない」(前出のブランド戦略担当者)との判断をした。なぜか。
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