フランスの列車事故は他人事でない――日本にも警鐘を鳴らしている杉山淳一の時事日想(2/6 ページ)

» 2013年07月19日 06時01分 公開
[杉山淳一,Business Media 誠]

「分岐器の不具合」の背景に「老朽化」と「保守の不備」

 フランスで7月12日17時15分に発生した列車事故は、パリ発リモージュ行きの特急列車の脱線転覆であった。列車は機関車が牽引する客車7両編成で、乗客は385人。この列車が時速135キロメートルでブレティニシュルオルジュ駅を通過しようとしたところ、駅の200メートル手前の分岐器で5両目以降が進路を外れ、4両目と5両目が分離した。非常ブレーキがかかったものの、4両目は横転しホームにいた人たちを巻き込んだ。5両目から7両目はホームにまたがるような形で惰性で進み大破した。

 この事故の原因について国内外の報道を追うと、分岐器のレールを接続する鉄製の部品が外れ、ポイント通過の障害になった可能性が高いという。脱線の状態からみて、4両目までと5両目以降が分岐機を境に別の進路をとった様子がうかがえる。つまり分岐器に不具合があった可能性が高い。しかし「分岐器のレールを接続する鉄製の部品」がどの部分を指しているか、そこが分からない。重さは約10キログラムという。おそらく、報道各社も理解しないまま、記者発表をそのまま翻訳していると推察する。

 線路の分岐器は、固定されたレール、可動するレール、脱線を防ぐガイドレールなどで構成されている。「分岐器のレールを接続する鉄製の部品」はいくつもある。固定されたレール同士をつなぐ部分にもあるし、可動するレールと可動装置(転轍機)を接続する部分にもある。ガイドレールにもある。

分岐器の仕組み。黒が固定レール、赤が可動レール、緑が「分岐器のレールを接続する鉄製の部品」に相当する部分

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.