フランスの列車事故は他人事でない――日本にも警鐘を鳴らしている杉山淳一の時事日想(3/6 ページ)

» 2013年07月19日 06時01分 公開
[杉山淳一,Business Media 誠]

「分岐器の不具合」はなぜ起きたのか

 分岐器には車輪が通過するための隙間も多い。これが列車を不安定にさせるので、分岐器を通過する場合は速度制限がある。ただし、新幹線などでは、高速で通過させるため、可動部分を増やして隙間を埋める「ノーズ可動型ポイント」もある。脱線した列車は「通常は同駅を時速150キロメートルで通過していた」というから、ノーズ可動型だったかもしれない。そのノーズが外れた可能性もある。もっとも、大陸の鉄道は日本と違ってゆったりしたつくりだから、分岐角度が小さければ、ノーズ可動型でなくても高速で通過できたかもしれない。

ノーズ可動型分岐器の仕組み 分岐の又に当たる部分が動いて隙間を塞ぐため、列車が高速で通過時しても安定走行できる
ノーズ可動型分岐器の設置例(成田スカイアクセス線)

 「分岐器のレールを接続する鉄製の部品」というだけでも、これだけの要素がある。だから、「分岐器のレールを接続する鉄製の部品」だけでは原因とは言えない。何が外れたか、図で示してほしいが、それで参考になる人は鉄道関係者くらいだから、一般市民向け報道では「分岐器の不具合」でいいだろう。

 問題は「分岐器の不具合」がなぜ起きたかだ。この部分で日本に住む私たちにも教訓とすべきところがある。

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