英語番組や英会話スクール、ネットを通じた英会話学習など、現代日本には英語を学ぶ手段が数多く存在しています。しかし、単語や文法などは覚えられても、その背景にある文化的側面については、なかなか理解しにくいもの。この連載では、米国で11年間、英語出版に携わり、NYタイムズベストセラーも何冊か生み出し、現在は外資系コンサルティング会社で日本企業のグローバル化を推進する筆者が、ビジネスシーンに関わる英語のニュアンスについて解説していきます。
前回「ヘンテコ英語で逆効果!? 企業スローガンはリスクがいっぱい」では、会社のスローガンやキャッチフレーズを取り上げました。スローガンと並んで各社が非常に力を入れているのが、カンパニーロゴ、つまりさまざまな知恵を込めて作り上げたその会社を代表する社名デザインです。ナイキのようにロゴと社名は別というケースもありますが、多くは社名を基にデザインしています。
有名企業のロゴには、興味深い意味が隠されていることがよくあります。だれでも知っている、世界中どこでも見かけるようなロゴに隠された意味が分かると、「なるほど!」と頬をゆるめてしまうようなものを紹介します。
キヤノンはその製品力の高さで世界中に知られている会社です。好感度も高く、米国でも相当な存在感を示しています。ニューヨークの東にロングアイランドという文字通り長い島がありますが、その一角にキヤノンの北米本社があり、その住所にはキヤノンの社名が使われています。One Canon Park Melville, NY 11747。カッコいいですね。地元ではキヤノン シティと呼ばれています。
キヤノンのロゴも独特のレタリングを駆使して、イメージの差別化を巧みに行っています。しかし、こんなに洗練された同社のロゴにも、実は変遷の歴史があるのです。
1930年代に使われていた製品ロゴはややおどろおどろしいデザインです。当時の社名は「精機光学研究所」でした。観音菩薩の慈しみに満ちた心で製品を作りたいという気持ちから、カメラを「KWANON(カンノン)」と名付けたのです。
ナニコレ!! とびっくりされそうですが、これもキヤノンの製品ロゴの歴史に残る1つ。KWANONというローマ字や、そこに描かれている絵を見て、キヤノンをすぐ思い浮かべる人はあまり多くないかもしれません。
現在の社名、キヤノンは「観音」という同社のスピリットを象徴する音にも近く、国際的に通用する「Canon」(規範、規準)という英語から取られたという興味深い歴史を持っているのです。
ときどきキャノンと、ヤを小さく誤記するメディアがありますが、あくまでもキヤノンという独特の表記にこだわるのは、観音(かんのん)の精神をルーツとする同社の伝統からすれば当然と、よく理解できます。
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