「続・半沢直樹」は映画か? TVか?公認会計士まーやんの「ロジカるつぼ」(2/2 ページ)

» 2013年10月01日 07時00分 公開
[眞山徳人,Business Media 誠]
誠ブログ
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ドラマは「広告料」を関係者が分配するビジネス

 一方のドラマはどうでしょうか? ドラマの収入の元となるのはご存知の通り「スポンサー収入」ですが、実はこのスポンサー収入には、2つのタイプがあります。

1.タイム広告

 「日曜日の21時〜」という時間枠で広告を出す権利をスポンサーが買い取る方式です。半沢直樹は「日曜劇場」という日曜日の21時からの枠での放送でしたが、この枠は昔から東芝などのスポンサーが広告を出しています。

 詳細は調べられませんでしたが、多くの場合、ドラマの制作費はこのタイム広告から得られる収入の範囲内でまかなうことになっているようです。

2.スポット広告

 上記とは異なり「時間枠を問わず、一定の視聴者の目に留まるまで、広告を出し続けてほしい」というのがスポット広告です。テレビCMでは、タイム広告枠のスポンサーのCM以外に、適宜このスポットのスポンサーのCMが流れます。

 テレビ局から見れば「一定の視聴者の目に留まるまで」何度でもCMを打つ必要があるため、高視聴率の番組を作ることができれば、より効率的に広告料を得ることができます。 テレビ番組は「タイム広告」という形であらかじめ時間枠を買い取ってもらい、その中で制作が行われるものです。したがって、映画の制作とは異なり、ある程度の収入を想定した上でドラマの制作ができるという利点があります。さらに、高視聴率をたたき出せば、スポット広告を効率的に消化でき、更なる広告料を得ることができます。

 それでも、欠点がないわけではありません。タイム広告枠を消化した残りの部分でスポット広告を展開するため、広告料の伸びしろにはおのずと限界がありますから、映画ほどの収入は見込めないかもしれません。

 また、「日曜日の21時〜」という枠は他局でも特番を組みやすい時間枠です。例えば、年末特番シーズンで「TBSで半沢、フジテレビですべらない話」と言うことになった場合、半沢を録画して「すべらない話」を観る、という人もたくさんいるのでは? と思います。

 そういった他局との争いに勝たなければならないという点で、テレビには映画にはない特有の厳しさがあります。映画の場合は競合する作品がある場合でも「両方観る!」という選択肢がありますが、リアルタイムでの視聴率が広告料を左右するテレビの場合は、その理屈は通用しないわけです。

結論:まーやんは「ドラマ」推し

book 池井戸潤著『ロスジェネの逆襲』

 映画とドラマを比べたとき、ハイリスク・ハイリターンの映画と、ミドルリスク・ミドルリターンのドラマ。一言で言うとそういう整理ができます。

 半沢直樹の場合、既に今回のドラマで十分過ぎるほどの知名度を得ています。しかも、次回作の原作にあたる『ロスジェネの逆襲』はすでに出版されており売れ行きも絶好調ですから、映画化・ドラマ化した場合の話題性に事欠くことはありません。つまり、リスクを気にせずに思い切った制作ができるため、映画になったときもかなり面白い作品になるだろうと思います。

 他局の成功例としては、フジテレビの『踊る!大捜査線』シリーズは、映画化で大成功を収めました。警察モノのドラマの場合は空撮や爆発など、ダイナミックな撮影で観客を楽しませてくれましたが、派手なアクションや特撮の必要のない経済モノのストーリーの場合、制作費に比例して面白さが増す、という話にはなりにくいのではないか? というイメージを私自身は抱いています。もちろん制作費を抑えて、利益率の高い作品にするという手もありますが、映画にかかる費用は制作費だけでなく、上記の通り配給や上映にもコストがかかるので、あまりスリムな運営もできない……と言う事情を考えると、旨みは多くありません。

 もちろん、私の結論が絶対ではありません。ココでは分析し切れなかったいくつかの事情を踏まえて、最適な媒体で続編を出すことになるはず。ですが、今ある情報を使う限りでは、映画にシフトする優位性はあまり見出せないかなぁ、と思っています。

 ともあれ、あんなに面白かった『半沢直樹』。続編でも、主人公たちの更なる奮闘を楽しく観たいものですね。(眞山徳人)

※この記事は、誠ブログ公認会計士まーやんの「ロジカるつぼ」:「続・半沢直樹」は映画なのか?TVなのか?より転載、編集しています。

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