刃物を手にして「元カノ」の家に忍び込むワケ――あるストーカーの告白窪田順生の時事日想(3/4 ページ)

» 2013年10月15日 08時00分 公開
[窪田順生,Business Media 誠]

「ストーカー事件」と「交際相手との痴情のもつれ」

 そしてもうひとつの理由が、「事件性」の見極めが遅いということだ。

 1万9920件のうち、「加害者」というのは「被害者の交際相手」(元交際相手を含む)が1万人以上。つまり、「元カレ」や「元カノ」なのだ。

 「昔付き合った彼氏に復縁を迫られています」

 「私から別れようと切り出したのに、納得がいかないとしつこくて……」

 そんな「痴情のもつれ話」が年間1万件。もちろん、今回のような悲劇に発展にする深刻なものも多いが、なかにはしょうもない痴話ケンカのような話も少なくない。これは本当に危ないのか、危なくないのか。双方の主張を聞いて、調書を作成して上役へ報告……なんてやっているうちに、精神的におかしくなった「元カレ」が包丁を手に、家へ忍び込むというわけだ。

 じゃあ、見極めを早くしろよ、と言う声が聞こえてきそうだが、「桶川ストーカー事件」の時代からあれだけ口酸っぱく言っても、窓口の愛想が良くなったくらい。ここらが「お役所」の限界なのではないだろうか。

 個人的には、この手の犯罪をなんでもかんでも「ストーカー」というくくりで考えるから、いつまでたってもおかしなことになっている、と思っている。

 アカの他人を変質的に追いかけ回すのと、「元カレ」が交際の恨みで「元カノ」を脅すのは、犯罪の種類として、全く違う。「ストーカー事件」と「交際相手との痴情のもつれ」とクッキリ分けるべきだ。前者は、警察の守備範囲だが、後者は、警察の介入によって余計にこじれることも多い。

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