刃物を手にして「元カノ」の家に忍び込むワケ――あるストーカーの告白窪田順生の時事日想(2/4 ページ)

» 2013年10月15日 08時00分 公開
[窪田順生,Business Media 誠]

「後手」になる理由

 事件が報じられると警察に批判が集中した。お前らがもっとしっかりやっていれば――。だが、勾留中の犯人からもらった手紙にはこんな一文があった。

 私は警官が警戒につく前(警官がまだいない時)にもう警官からまったく見えない家の裏側にいて、あの時は警官がいないものと思っていたし、張っていようがいまいが全く侵入するのに関係ない状況でした。

 実はこれも池永の事件とよく似ている。三鷹署は、つきまといをやめるよう池永に電話をしているのだが、実はその番号は池永の友人のもので、そのころすでに池永は沙彩さんのクローゼットに身を潜めていた。彼女が三鷹署に相談していたことすら知らなかったのである。

 つまり、警察は完全に彼らの「後手」にまわってしまっているのだ。

 「税金で食っているんだからパトカーの中なんかにいないで24時間態勢で家の周りをグルグル回れ」なんて意見もあるかもしれないが、「桶川ストーカー事件」然り、批判を受けて警察がシャキッと襟を正すのはほんのわずかで、しばらくすると再び「後手」にまわって、犠牲者が出るということが繰り返される。

 なぜいつも「後手」になるのか。理由は2つあると思っている。ひとつは寄せられる数が膨大だということ。

 昨年、全国のストーカー被害相談は1万9920件。これだけの数が舞込めば、どうしてもマニュアル的に対応に終始する。ひとつひとつの相談に対し、24時間態勢の警備ができるわけがない。

ストーカー事案の対応状況(出典:警察庁)

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