「バッテリー節約」「高速化」――その無料アプリは安全ですか?半径300メートルのIT(1/2 ページ)

» 2013年10月16日 07時30分 公開
[宮田健,Business Media 誠]

著者紹介:宮田健(みやた・たけし)

元@ITの編集者としてセキュリティ分野を担当。現在はフリーライターとして、ITやエンターテインメント情報を追いかけている。アイティメディアのONETOPIでは「ディズニー」や「博物館/美術館」などのキュレーターをこなしつつ、自分の生活を変える新しいデジタルガジェットを求め日々試行錯誤中。


 10年前くらいからでしょうか。Webを安全に閲覧するための“知識”として「怪しいリンクはクリックしない」という共通意識が芽生えました。同じように「怪しい添付ファイルはクリックしない」「怪しいアプリはインストールしない」という“知識”は、PCセキュリティ対策として一定の効果を上げていました。

 ところがスマホ時代になると、フリーミアムモデルによる無料アプリが一般的になったこともあって「怪しい無料アプリ」にだまされる人が後を絶たないのです。

「誰が作ったか分からない無料セキュリティアプリ」は安全か?

 筆者はサブ端末として、2年くらい前のAndroid端末を使っています。さほど使用頻度は高くないものの、セキュリティソフトの導入を検討しなくてはと思っていました。また、バッテリーの容量もそんなに大きくないので、1日使っているとどこかで充電しなければなりません。メモリも常に足りない状態で、使っているうちにどんどん重くなっていきます。ちょっと古いAndroid端末ですと、このような体験をしている人も多いでしょう。

 これを解決するために、アプリストアに「無料でバッテリーが長持ち!」「無料でウイルス退治!」「無料で性能アップ!」といった文言のアプリがあったら、思わず手が出てしまいますよね。無料だし、ちょっと試してみようかと思ってインストールしてしまうと、取り返しの付かないことになるかもしれません。

安心ウイルススキャン 安心ウイルススキャン

 例えば、「安心ウイルススキャン」という名前の無料アプリがありました。画面を見るといかにも本格的な印象を持ちますし、ダウンロードも10万件以上されている上に、評価も高めです。これは安心に見えますね。インストールして使えなかったとしても、無料なので懐も痛みません。

 このアプリをインストールすると、ウイルス定義ファイルのアップデートやスキャンをしているかのような画面が表示されますが、実際のところ、そんな機能はありませんでした。何をやっていたかというと、インストールした人の電話帳データを勝手に外部へ送信していたのです。

 この「無料セキュリティアプリ」は、約3700万人分の電話帳データを盗み出したといわれています(参照記事)。つまり、自分の個人情報だけでなく、家族や友達、あるいは取引先といった「他人の個人情報」をも吸い出していたのです。このアプリを作った男らは2013年7月に逮捕されましたので、この報道を覚えている人も多いかもしれませんね。

 このような不正アプリは、ほかにも存在が確認されています。その多くは「バッテリー節約」や「高速化」など、Android端末への不満を解消する無料アプリに見せかけられています。ほんのちょっとした好奇心があだとなり、自分だけでなく大切な人達の情報まで奪われるのです。

       1|2 次のページへ

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.